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ひとりでは出来ない何かを達成する会社。

株式会社上和電機 / 総合職

インタビュー記事

更新日 : 2023年11月30日

自分の「仕事の価値」を知ることは、働くことの意味に繋がる。

建物内のコンセントや照明などに電気を送るために欠かせない存在なのが「配電盤」や「制御盤」、「分電盤」などの電気設備です。その名前を聞いただけでは、どんなものか想像できない人も多いとは思いますが、商業施設や公共施設、マンションなど多くの場所で使われている、なくてはならない設備になります。その製造を行なっているのが山形県高畠町の上和電機です。今回は、代表取締役社長の村上秀樹さん、社員の前川賢一さん、渡辺竜一さん、佐藤美香さんにお話を伺いました。

株式会社上和電機 事業概要

1988年に設立した受配電設備及び制御システムメーカー。主に、工場、商業施設や公共施設、マンションなどで使用される大型の配電盤、制御盤、分電盤といった電気設備を製造しています。すべて自社オリジナル商品で、使用する施設に合わせてフルオーダーで請け負っています。設計、製造、検品、管理、設置工事まで一括で運用しているのが特徴です。
営業と設計からの指示を作業担当者にシンプルに伝えて管理するシステムとして「一括管理システム」と「一気通貫生産システム」を採用。この2つのシステムを開発したことによって、各工程にかかる設計の負担を削減し、全作業者の1日の作業内容を指示、管理することを可能にしています。そのおかげで安全な機器が製造できるだけでなく、短納期で提供できる強みを得ました。
取引先のほとんどは関東圏で、営業担当者は東京営業所に勤務。製造はすべて高畠町で行なっています。
2018年よりベトナムの日本語学校と提携を組み、技能実習生の受け入れを開始。現在、実習生が6人、特定技能生が4名、合わせて10名が働いています。

絶望を経験したからこそ、全社員の「和」をもって、「上」を目指せる

上和電機は、営業から設計、製造など全工程を一貫して行なう自社メーカーとして運用していますが、設立当初は関連会社の下請けからスタートしました。15年ほど続けた後、自社メーカーを立ち上げ、業務を拡大しています。

「父が立ち上げた会社で、他社製品を製造する下請けとしてやってきましたが、このまま同じことを続けていては発展していかないのではないかという危惧がありました。“下請け”という仕事は、いくら立派な製品を早く作っても、その価値は私達では決められない。市場で製品を買ってくれる人と直接交渉しているわけではないので、私達では価格は変えられないんですよ。その状況を変えるために市場に出てみようと決めたんです。いざ乗り込んでみると、敵は大きいし、実績も必要。そこよりも買い手に対してのメリットを出そうと思ったら、安くするしかありません。めちゃくちゃ苦労しました。自社製品を作り始めて、最初の10年は正直なところ赤字です。倒産スレスレまでいきました。世の中の厳しさを直に感じましたね」

市場の厳しさを目の当たりにし、絶望の淵まで突き落とされた上和電機でしたが、少しずつ「戦い方」を身に着け、業績は好転。それは村上社長の「自分たちは、どうやっていけば勝てるのか」を模索し続けた結果でもあります。

「その当時、社内に設計部隊もなければ、営業もいなくて。そこから改革をしていきました。私は専務でしたが、設計部を作り、技術と工場の管理を。弟が『東京で営業をやりたい』と提案してくれたので、営業を一任。彼は今も東京営業所で働いています。父が経営全体を見て、弟と3人、トライアングルで会社を立て直していきました。好転したきっかけは2011年の東日本大震災の翌年に、太陽光が流行りだしたことがあります。メガソーラーが出始めた時期です。まだライバルが少ないときから太陽光発電には取り組んでいたので、東芝三菱産業システムから声がかかって、大規模太陽光発電システムの『エンクロージャー』の製造をしていました。また、同時期に板金工場を現在の場所に建てたのも大きいです。敷地が狭かったせいで、外注を出さないといけないこともあって、その無駄をなくすことで売上を伸ばすことができました」

少しずつ利幅の大きい仕事が増えるようになり、実績を上げることでの信頼も得てきます。その後、上和電機が大きく変わったのは、2015年に無人で動かせる機械を導入したことです。

「当時使っていた機械は、操作するオペレーターの腰に負担がかかり、コルセット巻きながらの作業でした。それが故障し、手伝ってもらえる工場に従業員と一緒に材料を運んだ時、その重さに私は材料を運ぶことができなかったのです。そこで、材料を搬送し作業員がいなくても自動で作業してくれる機械を導入して、運用する方法を考えました。板金を設計図通りに切断する機械なのですが、通常はCADオペレーターが設計図を機械用に作成して動かす必要があります。弊社は設計もやっているのに、もう一回CADオペレーターが設計をしなければいけないのは無駄ですよね。なので、設計部が使っているCADデータを利用して機械を動かせるようなソフトを作ってもらい、自動で動かせるようにしたんです。これによって効率は格段に上がり、さらなる短納期を実現できるようになりました」

機械導入には、かなりの額を投資したと言います。しかし、それによって得られる仕事は多くなり、売上にもしっかり反映されました。機械導入は人件費削減よりも、売価を上げることが目的だったそうです。

「私は、従業員の給料を上げることしか考えていません。そのためには、経費を削減することより、製品の売価を高くするほうが近道だと思っています。グレードの低い機械では、当然それなりの製品しか作れません。そうなれば取引先にも高い売価を提案できませんよね。弊社は優れた機械を入れて、価値のある製品を生み出しています。だからこそ取引先の方には通常の工期なら、この値段ですが、基準以上の短納期を希望される場合には、倍の料金をいただきますとハッキリ伝えられるんです。そんなに強気だと仕事がなくなるよって言われたこともありました。でも日本人は安く請け負うということにステイタスを感じるから給料が上がらなかったわけで。私は従業員の給料を上げたいので、その仕事に見合った対価をいただきたいと考えます」

短納期を求められることは、決して楽なことではありません。しかしその分、対価が高くなるとわかれば作業員のモチベーションは変わります。だからこそ、村上社長は社員に対して、自分たちの仕事の“価値”を細かく伝えていると言います。

「自分たちの仕事がどれくらいの価値があるのか知ったうえで働くのと、知らないで働くのでは、違いがありますよね。短納期にはなるけれど、10万の価値の製品が100万になるのならば、そこに価値を見出だせるかもしれない。ただし、100万の価値にするためには、自分は何をすべきなのかは考えて欲しいと伝えています。普通に仕事をしていたのでは、それにお客さんが高い金額を出してくれるわけがありません。自分たちが市場で有利に成果を上げるために一人一人の処理する能力を高めていく。それができるようになってから、市場コントロールすることができるようになりました」

他社がやっていないことを試すのが楽しい

新規機械導入など、新しいことを次々に行なってきた村上社長ですが、福利厚生の面でも“他にはない”を心がけています。

「就業時間内に、無料でマッサージを受けられる制度を導入しています。予約制なんですが、みんな利用してくれていますね。あとはIQOS(加熱式たばこ)を無料提供していて、逆に禁煙者にはその分、2000円の禁煙手当てを支給しています。夏には休憩時間にかき氷を提供したりも。福利厚生は、社員のためにというより『そんなことしているんですか!』って言われることが気持ちいいなぐらいの感覚です(笑)。私がこういうスタンスなので、社員たちがおもしろいと感じてくれたら長くいてくれるでしょうしね」

30周年の記念時にも、絵本を作成するというおもしろい試みを行なっています。

「最初、印刷会社の方から記念誌を作ろうと提案いただいたのですが、それじゃあおもしろくないじゃないですか。それで絵本にしました(笑)。私と弟は、考え方がまったく違うので、一緒に仕事をすることのリスクってなんだろうってことから物語は始まっています。1冊で完結でもなく、今後続くようなストーリーにしました。実はこれのほかに動く絵本ということで、映像で父親が創業したときの話も作っているんですよ。絵本も映像作品も、パンフレットや記念誌より、遥かにコストはかかります。だけど、例え安くても捨てられるものにお金をかけても意味がないなって。30周年から5年が経ちましたが、絵本は色褪せませんしね」

2018年にはベトナムから技能実習生を受け入れ、共に働いています。それもまた、新しい取り組みとして始めたことのひとつです。

「初めは社内の寮に住んでもらっていたのですが、10人に増えた今は、近くのアパートに住んでもらっています。日本語はほとんど通じないままに来ても、意外と大丈夫なもので。社員たちとも仲良くなって、休みの日に遊びに行ったりしているみたいですよ。社員からの提案で、挨拶はベトナム語にしているんです。そういうコミュニケーションも大事ですよね。やはり日本人が上って感覚で接してはダメですよね。私はそういう社員だけは許さなかったです。最初彼らは教わる側ですが、技能技師者になったら立場は同じ。日本人でも伝わらない人がいるのに、ベトナム人に伝わらないのなんか当たり前です。日本人だから偉いなんてことはないんです。実際、しっかり働いてくれていますしね。彼らがきちんと技能を身に着けて母国に帰ったときに、上和電機を好意的に思ってくれる人がベトナムにいるって嬉しいじゃないですか。今後は、韓国からの受け入れも考えています。少しでも違う文化に触れる機会があれば、考え方も変わるし、気づくことも増えます。何もしないで新しいことを知らないまま年を取っていくのって、やばくね? って思っちゃう。でもそっちの人のほうが多いのが現状ですよね。私はそうならないために、世の中がやってないことがあれば、やってみようって思っています」


人間が想像できる以上のことをやり遂げたい

メインの仕事は、配電盤の製造という電気設備を扱うことですが、村上社長はそれにとらわれず、挑戦することは辞めたくないと言います。

「弊社でやれる仕事、地域で盛り上げられることは、無数にあると思っています。弊社がどこまでやれるかはわかりませんが、ずっとチャレンジし続けていきたい。この場所で、何でもできるようになれたらすごいなって思うんですよね。TOYOTAを追い越せ! じゃないいですけど、それぐらいの気持ちで私はいます。現在、離れた場所にある塗装工場を同じ敷地に移す計画があり、同時に新しいことも生まれたらベスト。人間が想像できることではおもしろくない。『上和電機でこんなことしているの⁉』って思われたいですよね。例えば、新しく入ってくれる方が配電盤とは関係ないけれど、やってみたいってことがあると。それを私がおもしろいと思えれば、出資するかもしれません。一辺倒なことをしていては変われないので、新しい風を吹かせてくれる方には投資したいと思っています。私、個人としては、老後も働きながらここで暮らせる会社になれたらいいなと考えています。働く人が年を重ねて、例えば一人になってもさみしくならないように、この会社が存在できたらと思います」

影響を受けた人は、Mr.Childrenの桜井和寿さんという村上社長。彼が作る万人に受け入れられる曲を聞き、フラットに物事を考えるようになったそう。ドラマやリアリティー番組も大好きで、Z世代が好む音楽にも興味があります。その親しみやすさのおかげか、村上社長が若い世代の社員とも気軽に話している様子がありました。「24時間365日会社のことを考えている」と話す村上社長は、絶望も経験したからこそ上がるしかないという強い心構えがあるのが伝わりました。次は実際に働いている3名にお話を伺います。

 

社長が社員の意見を取り入れ、挑戦してくれる

—— 仕事内容を教えてください。

前川賢一さん:総務部でアドバイザーをしています。2022年の6月に入社しました。前職は、レストランや施設の立ち上げ、イベントの開催、誘致などを手掛けていました。有名なところでいうと、宮城県川崎町に東北最大の野外音楽フェスティバル「ARABAKI ROCK FEST」の誘致を図り開催させてきました。まったくの異業種からの転職ですが、前職で人材育成をしていたこともあり、現在は、人材育成の研修や個別面談等を定期的に実施して、社員の働きやすい環境を整えるなどの組織改革をメインにコンサルティング的な仕事をしています。

渡辺竜一さん:配電盤の組み立てを担当しています。2020年入社で3年目です。同業他社からの転職で、そこでは板金を担当していました。同業とはいえ配線やルートを考えたりする組み立ては、まったく違う作業になるので、入社してからすべて学びました。

佐藤美香さん:2020年入社で、総務部で働いています。社員の出退勤の管理が主な仕事です。前職とは全く違う業務ですので、3年経った今も初めて知ることが多くあり、やりがいに繋がっています。

—— 上和電機で働く良さはなんですか。

前川さん:社長が新しいことに積極的に取り組む方なので、その姿勢に共感しています。私は、施設の立ち上げなど常に新しいことを作り上げる仕事をしてきたこともあり、常に向上心を持って取り組みたいと考えています。挑戦は刺激であり、仕事の楽しさ。その気持ちを社長と共有できているのは、とても嬉しいです。

渡辺さん:社員同士の仲が良く、頑張りに応じて評価してもらえるのはありがたいです。以前は社長がボーナスの査定などを行なっていたのですが、今は直属の上司の査定のほか、自分でも評価を上に伝えることができるようになり、それはかなりやる気に繋がっています。ほかにも、配電盤の取付工事で出張がある際の手当てを上げて欲しいという要望が社員からあがったときに、「働き方改革推進委員会」と「幹部会」で検討してくれて実行してくれました。社員の意見を上の人たちがきちんと聞いてくれる会社だと思っています。

佐藤さん:今年から年間の休みが17日ほど増えました。それも社員からの要望があって、「働き方改革推進委員会」で検討し1日に3回ある休憩時間を短縮するなどの対応で実現することが出来ました。そういった風通しの良さに働きやすさを感じています。

—— 今後チャレンジしたいことを教えてください。

前川さん:いずれは配電盤の技術を利用して、何かほかのものを製造する会社になりたいと思っています。そのためには社員全員の理解と技術力が必要になるので、彼らが働きやすい環境を整え、挑戦していきたいですね。

渡辺さん:まだまだ覚えなくてはいけない作業があるので、それをすべてクリアにしていきたいです。先輩に頼らず、ひとり立ちできるように頑張ります。

佐藤さん:若い人に入りたいと思ってもらえる会社を目指したいです。そのために私達が何をしなければいけないのかを考え、行動していけたらと思います。

 

上和電機はこの数年で社内環境の大きな改革を行ないました。「社員の意見は聞いていきたい」、社内ルールは社員が主となって決めるように。という社長の想いを反映し、2022年、社員が自主的に「働き方改革推進委員会」を立ち上げ、ルール(規定)の見直しなどの改革を行なってきました。社員同士、より働きやすく、さらに上を目指そうという向上心が芽生えてきています。「組織で会社を盛り上げる」。その気持ちを大事に、一丸となって働ける会社なのではないでしょうか。

取材・文_中山夏美