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酒は金内 味じまん

有限会社金内酒店 / ルートセールス

インタビュー記事

更新日 : 2023年10月06日

お客様に対して誠実に。地元の味を伝える老舗酒店

日本有数の米どころである山形は、古くから日本酒の産地としても有名です。今年は、日本酒の出来栄えを競う「全国新酒鑑評会」で、20点の酒が「金賞」に選ばれ、受賞数が9年ぶりに日本一となりました。その中でも置賜地域には酒蔵が多く、多様な日本酒が造られています。地元のお酒の味を広く伝えるべく、米沢駅前に店舗を構えるのが「金内酒店」です。昭和6年に創業してから、一般家庭、飲食店、観光客など、幅広い客層に“山形の酒”を届けてきました。今回は、代表取締役社長の金内晴一さんと、社員の池野豊さん、渡辺由利子さんにお話を伺いました。

有限会社金内酒店 事業概要

昭和6年創業。それ以前から長町(現在の米沢市春日)に店舗があり、奥羽本線が開通することを機に「駅を中心に商売が成り立つ」という理由から現場所に分店としてオープン。現在は統合し、現場所のみの店舗となりました。
県内のお酒をメインに51銘柄を販売。一般家庭への販売が主でしたが、平成元年の酒税法改正によりスーパーやコンビニでもお酒を取り扱うようになってからは、卸売業にも力を入れ始めました。飲食店、旅館、ホテルなど米沢市内だけで100軒以上と取り引きがあります。また、令和3年から米沢市のふるさと納税に「キリンラガービール」が加わり、その発送、管理を担っています。

金内晴一さんは、昭和60年に父親から経営を引き継いだ3代目。80歳の現在も、仕入れから配達まで「顧客のために汗をかく」ことを惜しまず働いています。「お客様からの信用」を大事にする金内社長に話を聞きます。

変化に立ち向かう姿勢で乗り越える

今はスーパーやコンビニ、ディスカウントストアなどあらゆる場所で購入できる酒類ですが、酒税法が改正される以前は、酒店でしか買えないものでした。アニメ『サザエさん』に登場する“三河屋さん”のように、一般家庭に酒屋がお酒を届けるのは当たり前の光景だったのです。

「昭和60年代までは、一般家庭が主なお客さんでした。それが酒税法改正によって、お酒=酒屋ではなくなった。これまでの売り方だけでは経営が成り立たなくなったので、卸売業を始めたんです。当時はこちらから営業もかけましたし、今だと声をかけてくださることも多いですね。飲食店が新しくオープンする時には、どんなお酒を置いたらいいかの相談にも乗っています」

平成18年には店舗を大幅リフォーム。それは新たな顧客を生むきっかけにもなりました。

「店舗の老朽化が最大の理由ではあるのですが、私は昭和18年生まれなので、平成18年にリフォームをしたのは“生まれ変わる”という意味もありました。古民家を活かしつつフルリノベーションし、お店の雰囲気も一転。フリーでお店に来てくださるお客さんも増え、同時にホームページを作ってインターネット販売を始めたのもあって、売上も伸びました。私なりの大改革の年です。その3年後に東日本大震災が起きましたが、酒瓶3本の被害で済んだのは、このリフォームのおかげだと思っています」

酒税法改正やリーマンショックなど、苦難と立ち向かった過去はありますが、コロナ禍においては、かなりの苦戦を強いられたと言います。しかしそこでも、金内社長の臨機応変な対応が大きな転機となりました。

「売上は半分まで落ち込みました。飲食店も宿泊施設も営業ができない状況だったので、影響は大きかったですね。そこで新しく取り組みを始めたのが、ふるさと納税です。米沢市で収穫されたホップがキリンビールに提供されていることを知り、それをふるさと納税に加えることを市に提案したんですよ。物価高騰もあって、ふるさと納税は贅沢品よりも実用品を求める人が多くなっています。そこにビールが功を奏し、うちの売上にも繋がったわけです。それでなんとかコロナ禍を乗り越えました」

 

お客様と同じ目線で居続ける

実は金内社長、占いが大得意だそうで、それを目当てに店を訪れるお客さんがいるほど。米沢商工会議所が主催する「まちなかゼミナール」(個人店が店で開講するミニ講座)でも、社長の占いは好評だと言います。

「当店が行なっているのは、利き酒の講座なんですけど『占いもあるかも』なんて言ったら、そっちも盛り上がっちゃって(笑)。生年月日占いをやっていて、自信はありますよ。新店舗のオープン日を占ってくださいって頼まれることもありますね。長年、ここで酒屋やっているので、地元の人から何か困りごとがあると相談されることはあるかな。そういう人脈もうちの強みかもしれませんね」

常にお客さんの目線で、自分が年長者であろうと上から目線は絶対しない。新しいことにも耳を傾け、取り入れる金内社長の姿勢に共感する人も多いと言います。それが店の信頼にも繋がっています。

「お酒が売れることがいちばん。そのためなら何でも挑戦します。でもそこで相手との信頼と信用は崩してはなりません。言葉遣いと礼儀は必要最低限のマナーですし、相手が年下であっても上から物を言ったりもしませんよ。私は酒屋のくせにお酒がめっぽう弱いんです。ビールをコップ1杯飲んだだけで顔が真っ赤になっちゃう。だから従業員の意見も大事にしています。仕入れは渡辺と一緒にやっていますし、彼女の意見も信用しています」

長年在籍する社員がほとんどで平均年齢も高い金内酒店において、新しく欲しい人材は、店の信念に共感し、一緒に頑張れる人。

「お酒に詳しくなくても、飲めなくてもいいんです。とにかく素直で真面目な人であればいい。うちは社員が5人の小さい酒屋。その分、家族のように働ける職場だと思っています。自分の主張を押し通すより、共に進める人を求めています」

この地で酒屋を始めて92年。次に取り組んでいきたいのは、デジタル化です。

「AIを駆使した決算システムの導入も今後考えています。ホームページの強化と同時にインターネット販売も、より一層力を注いでいけたらいいですね」

個人店は、商品セレクトの豊富さと同じぐらい働く人の良さが強みとなります。金内社長の人柄が店自体の魅力へと繋がっているのは間違いありません。次は社員の2名にお話を伺います。

 

社員同士高め合いながら、前進する職場

—— 仕事の内容を教えてください。

池野豊さん:入社27年です。飲食店などへの営業と配達を担当しています。新規オープンの立ち上げ時には、店のコンセプトに合わせてお酒を選んだり、段取りのお手伝いもします。

渡辺由利子さん:入社20年です。私はお店での接客と通販、ふるさと納税の発送のほか、商工会議所が主催している「まちなかゼミナール」の講座も担当しています。社長と一緒に仕入れも担当させてもらっていますね。贈答用として山形のお酒を求めていらっしゃるお客様も多いので、ほかでは売ってないものや珍しいものを意識してセレクトしています。

—— 仕事のやりがいは何ですか?

池野さん:前職はパソコンに向かって個々が仕事をする職場だったので、最初はお客様とのコミュニケーションの取り方がわかりませんでした。話し方も接し方もわからず、戸惑うことも多かったのですが、長年やっていくうちにそのやり取りが楽しくなってきて。お客様に感謝していただけるこの仕事が好きになっていきました。私はお酒が弱いんですが、気にせず働ける職場です。

渡辺さん:私はお酒が好きで、自分でもよく飲みます。でもおいしさを言語化するのって、すごく難しいじゃないですか。だから最初はオススメを聞かれても、説明するのが苦手でした。そこで店頭でお酒を試飲された方が、どんな表現をされるのかをメモするようにしたんです。「こんな料理に合いそう」とか感じたことを教えてくださるので、それを活かした接客をするようにしたら、自分の思いも合わせて伝えられるようになりました。お客様とのコミュニケーションが楽しいですね。

—— 職場の雰囲気はいかがですか?

池野さん:社員が少ないのもありますが、社長が全員に目を配ってくれていますし、定休日以外の休みは自分に合わせて取ることができます。社員同士もよく会話をする職場だと思いますよ。

渡辺さん:平成18年に店舗のリフォームをしてから、グッと働きやすくなりました。それまではどちらかというとお店に入りにくい雰囲気があったようで、駅前にありながらも観光のお客様は少なかったんです。業務用のイメージが強く、いらっしゃる方は酒屋だと知っている人ばかり。それが今の店舗に変わってから、出張で訪れたサラリーマンの方や外国人観光客など、新規の方がフラッと立ち寄ってくださるようになりました。風通しもよくなったように感じています。

—— 今後、挑戦していきたい取り組みがあれば教えてください。

池野さん:コロナ禍でガツンと落ちた売上をここからもう一度回復していきたいです。やっと観光客が戻ってきて飲食店の集客も増えてきているので、心機一転、米沢市を盛り上げていきたいと思っています。

渡辺さん:時代に合わせた試みには積極的でいたいです。うちの店に合った取り組みで社会に貢献できること、5年、10年後にも残せるものを考えていきたいと思っています。

 

老舗でありながら、考え方は先鋭的。歴史を大事にしつつ、新しいことには前向きです。お酒が弱くても、その文化が好きな人は多いはず。地元が愛する味を伝える1人として、新しい世界に飛び込んでみるのも楽しそうです。

取材・文_中山夏美