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さまざまな場所で目にしたり、耳にしたりする「信用金庫」ですが、皆さんは同じ金融機関でも「銀行」と「信用金庫」の違いをご存知でしょうか。
一般的に、銀行は、株式会社であるため、株主の利益を優先する必要があります。すなわち利益第一主義で、大企業を含めた全国の企業との取引が可能です。
一方、信用金庫は地域の繁栄を目的とした組織で、相互扶助を基本理念とします。中小企業や個人が主な取引先で、地域社会の利益が最優先。そのため信用金庫ごとに営業エリアは限定されますが、その分、地域の中でお金を循環させ、地域経済を活性化させる、いわば「地域のための金融機関」となっています。
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それぞれの信用金庫のその成り立ちは様々で、岩手県一関で約70年前に立ち上がった「一関信用金庫」にも成り立ちには特別な理由があります。
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2022年春、一関信用金庫の理事長に就任した菅原一由さん。
一関市大町で生まれ育ち、大手地方銀行での海外赴任なども経て、今から約20年前に一関信用金庫に入庫しました。
「私の実家は戦前から米屋を経営しており、食料品の卸業を長くやっておりましたので、信用金庫にも両親の知り合いがたくさんいたんですね」
「しかも、父親の名前が『一』、母親の名前が『由美子』ですから、いざ一関に帰ってきましたら、下の名前でお客様にすぐに気付かれまして(笑)。『一ちゃん、由美子ちゃんの息子だね』といろいろな方々に可愛がっていただきました」
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入庫当時を振り返る菅原さん。まさに地域密着型の金融機関ならではのエピソードです。
一関信用金庫が設立されたのは1948年7月。その前年の1947年にはカスリン台風、翌48年にはアイオン台風が襲来し、一関市は2度の大規模水害に見舞われていました。戦後間もない大災害からの復興を図る目的で立ち上がったのが、一関信用金庫でした。
「現在、全国で200以上の信用金庫がありますが、その中で災害復興を目的に設立された信用金庫は3つしかありません。地元の住民の方々に作っていただいた協同組織であり、70年以上の間、地域の方々に育てていただいた金融機関であると言えます」
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そんな菅原さんには、信用金庫で働く上で大事にしている3つの言葉があります。
一つ目は、「心を込める」。
命の次に大事なお金を取り扱う仕事とあって、どんな時でも誠心誠意、お客様に寄り添う姿勢が大切だと話す菅原さん。そこには新人時代に経験したある出来事が影響しています。
「以前、子どもの予備校の入学金を振り込みに来られたお客様がいらっしゃいました。その方が翌年、大学の入学金を振り込みに来られたので、『おめでとうございます!』とお祝いしたことがあったんです。」
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「我々にとってはたった一枚の伝票も、お客様にとっては一生に一回の大事な節目の一枚かもしれない。だからこそ、一件一件、心を込めてお取り引きしなければならないと今も思います」
二つ目は、「地域で生きる」。
水害から立ち上がり、地域と共に70年以上の長い年月を歩んできた一関信用金庫。
地域との縁、すなわち「地縁」こそが、この仕事では欠かせないと考えています。
「終戦から2年後の、戦後間もない時代にカスリン台風が街を襲いました。2度目の水害となったアイオン台風に至っては、なんとその慰霊祭をしていた時にやってきたと言われています。そのように一関の中心商店街が大きなダメージを受けた状態で、地元の商工会議所さんにつくっていただいたのが当金庫であります」
「そして、信用金庫は非営利の協同組織でもあります。いかにして地元の皆様のお役に立つことができるか、ということを大事にしています。なので、年頭所感でスピーチを述べる際にも、必ず新入職員の方々には『当金庫は地元の皆さまに生んでいただいた金庫です』ということを伝えています」
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そして三つ目が、「働きやすい職場環境づくり」。
地域住民に幸せを届けるためには、まずは自分たちの幸せを追求しなければなりません。
最近は上司と若手職員の1on1ミーティングを取り入れることで、オープンな評価制度を導入。職員のモチベーションの向上にもつなげています。
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また、数字やノルマに追われるイメージのある銀行の仕事だが、今の信用金庫の評価制度は変わってきているという。
「たとえば住宅ローンで言えば、お客様の生活に伴走しながらご提案をするのですが、結果的に他からのお借入れになることもある。それでも、そこまでのプロセスは職員の成長にとって、とても重要なこと」
「昔は結果ファーストになりがちでしたが、数字だけを追うのではなく、どこまでお客様に寄り添うことができたか、途中経過も確認しながら、プロセスの部分をしっかりと評価するような制度に変わりました」
職員が生き生きと働くことのできる環境は、若手の成長にとっても大切なことです。
花泉支店で働く入庫6年目の小松さんは現在、渉外係として担当エリアのお客様を訪ね回っています。
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「基本は外回りで、集金業務や定例訪問などが主な仕事になります。個人のお客様から法人のお客様までを対象に、通帳に入金するお金を預かったり、融資やローンのご相談に応じたりしています」
もともとは窓口業務を志望していたという小松さん。渉外に異動となった当初は、知識や経験も全くなく不安だらけだったそうですが、先輩方のサポートや相談しやすい職場環境のおかげで、日々充実した仕事ができていると言います。
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「だいたいは1年周期で担当が入れ替わるのですが、その1年の間で、名前を覚えていただけたり、個人的なご相談もいただけたりすると、『お客様と打ち解けられたかな』といった達成感を感じます」
「人とおしゃべりするのは好きなほうなので、時にはお客様と仕事とは関係ない話をすることもあります。息抜きと言ったらおかしいかもしれませんが、お客様がいつも話し掛けてくださるので、気を楽にして仕事をすることができています」
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渉外の仕事もすっかり板につき、「今は逆に窓口業務ができるか不安です(笑)」と話す小松さん。職場の雰囲気も明るく、仮にしゃべるのが苦手な人でも、きっと楽しんで仕事ができるはずだと念を押します。
「金融機関はどうしても堅苦しいイメージが強いですが、そんなことはありません。最近は若くして役席に就いている職員も多いので、いずれ私もそうなれるように、もっと知識や正確性を身に付けていきたいですね」
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事務部副部長の千葉さんは、前職でシステムエンジニアだった経験を買われ、2007年に一関信用金庫に入庫。以降、金融システムのさまざまな業務に携わってきました。
千葉さんの役職は「事務管理課システムリスク担当」。
預金・融資・為替などの勘定系システム、融資統合・渉外支援などの情報系システム、窓口端末・ATM関連・伝票読み込みなどの営業店システムの管理をはじめ、社内システムの運用・管理、また、ホームページの制作、各種プログラムの開発、サイバーセキュリティ対策など、仕事は多岐にわたります。
「それまでは都市部のシステム会社でエンジニアとして働いていましたが、私が信用金庫に入った頃は、金融機関のシステムがまだ普及していない時代でした」
「今ではクラウドサーバーがあってそこにアクセスする形ですが、当時はネットワーク化されていない、いわゆるスタンドアロン形式。まずはサーバーを導入するところから始まりました」
全国を相手にするシステム会社のエンジニアと、地方の金融機関のエンジニア、それぞれを経験した千葉さん。その違いを次のように感じると言います。
「様々な仕事を任せてもらえることと、自分の技術と経験を生かして地域に貢献できる点が大きいですね」
「金融機関とあって個人データの漏洩は絶対にあってはならないこと。その辺のリスクもしっかり管理しながら、システムの改善や新しいサービスの導入によって、お客様の利便性が向上する瞬間にやりがいを感じます」
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これまで金融機関では対面取引が基本でしたが、最近ではインターネット決済をはじめとしたデジタル化も各機関で進んでいます。
「当金庫では、自分が『こうしたい!』と希望を伝えると、チャレンジさせてもらえる環境があります。特に最近で言えば、キャッシュレス決済が全国的に普及している中、そこに関して信用金庫はだいぶ遅れを取っておりました」
「お客様からも『導入してほしい』とのご要望をたくさんいただいていたので、全国信用金庫協会にも何度も電話をして、導入を働きかけましたね」
一方で、従来の手法に慣れ親しんだ高齢のお客様が多いのも事実。千葉さんは「バランスの見極めが重要」と前置きしつつ、さらなる業務の効率化について意欲を高めています。
「現在の理事長も、先進的な取り組みをどんどん採用してくださる方なので、とても働きやすいですね。直近では、資料のペーパーレス化や、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)による作業の自動化に力を入れています」
「今後もバランスを見極めながら、お客様にとって、より便利で安全なサービスを提供できるようにしたいです」
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地方都市の高齢化や人口流出が各地で進む昨今、一関地域も例外ではありません。そんな時代だからこそ、信用金庫の存在はこれまで以上に必要不可欠になっていくことでしょう。
菅原さんは、地域の未来を見据えながら、前を向き続ける姿勢が今後も大事であると話します。
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「地域の金融インフラを守るという意味でも、5年、10年先を見越していかなければなりません。たとえば最近では店舗統合を進めており、これまで16あった店舗を13に再編。財務内容のさらなる改善を図り、経営基盤の安定化に努めてまいります」
「資金繰りの面だけではなく、人材育成もこれからの大きな課題です。女性活躍の推進はもちろんのこと、最近では一関高専をはじめとした産学官連携も始め、社外育成にも力を入れています。課題を先送りせずに投資し続ける、常に『フォワードルッキング』の視点を持った信用金庫でありたいと思っています」
地域に寄り添い、地域と共に進んでいく。創業当時から変わらず、一関信用金庫はこれからも伴走者として、お客様の人生をサポートしていきます。
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取材:郷内和軌