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自然の恵みを大地へ還す。循環型社会で100年先の未来につなぐ

有限会社バイオ・グリーン / 一般事務

インタビュー記事

更新日 : 2024年10月09日

宮城との県境に位置する一関市藤沢町の大籠地区。

かつては「東北の島原」とも称された、キリシタンの殉教地としても知られています。

歴史を伝える建造物が並ぶ中、山奥に車を進めるとポツンと現れオフィス。

緑の木々に囲まれた場所に、有限会社バイオ・グリーンはあります。

有限会社バイオ・グリーン 事業概要

1990年、バークたい肥や畜産用敷料の製造販売を手掛ける有限会社グリーン総業が創業。

有限会社バイオ・グリーンはその破砕部門として2003年に設立され、木くずなどの産業廃棄物・一般廃棄物の中間処理を主に請け負ってきました。

「破砕した木くずはチップ化して、バイオマス燃料や製紙原料として販売します。いわばSDGsの先駆けといえる事業ですね」

 

柔和な表情で語り出すのは、代表取締役の佐藤博さんです。

以前は同じ藤沢町内で畜産業に従事し、そこでは経営に携わってきましたが、実兄である有限会社グリーン総業の代表取締役・熊谷勝さんに声を掛けられ、バイオ・グリーンの設立と時を同じくして林業の世界に飛び込みました。

「畜産業も林業も、自然から恩恵をいただきながらいい製品を生み出していく、という共通点があります。ただ、その中でも林業は、地球温暖化という環境問題に大きく関わる仕事。自然を利用しながら、それらを循環していく仕組みをつくっていく必要がありました」

 

「自然からの恵みはやさしく大地に還す」

これは、グリーン総業、バイオ・グリーンが掲げる経営理念です。

現在、バイオ・グリーンで製造した燃料チップは、近隣の小学校のボイラーなどに納められています。

地元の大切な資源を、生活のエネルギーとして人々に活用してもらう。

「山や自然の利用価値を上げること」が林業における一番の目標だと、佐藤さんは口にします。

また、バイオ・グリーンでは移動式破砕機を使った現場破砕や、除根作業、法面吹き付けなども業務として請け負っています。

中でも2008年の岩手・宮城内陸地震の際には、各地の被災現場に出向いて早期の災害復旧に尽力。

その後も大型台風や集中豪雨における河川の維持管理、除草作業をはじめとする道路の維持管理などで力を発揮し、住みよいまちづくりの醸成にも寄与してきました。

 

現在、オペレーター兼施設長として現場を切り盛りする北條歓久さん。

普段は重機を使いこなし、トラックで運搬されてきた大量の木材や解体材の破砕作業を主に担当しています。

北條さんは一関市室根町出身。2024年で入社6年目を迎えますが、それまではタイヤメーカーの営業マンとして働いていたそうです。

「実はバイオ・グリーンの部長が高校の後輩なんです(笑)。それである日、彼から社員を募集しているという話を聞きました。自分、新しいことに挑戦するのが好きなんですよ。重機に乗ってみたいという思いもあって、この会社にお世話になろうと決めました」

 

好奇心にくすぐられ、心機一転、新たな職場に移った北條さん。

重機作業は全くの未経験でしたが、優しい先輩たちに見守られながら日々成長を遂げ、今では現場を1人で任される存在にまでなりました。

「どんな仕事も自分で考えることが大事です。たとえば今の仕事であれば、木材や解体材がどんどん運ばれてくるので、それらをいかにうまく捌けるかが求められます。トラックからの卸し方を自分なりに工夫しながら、できるだけスピーディーに重機を動かしていく。うまく捌けるようになった時に、大きなやりがいを感じますね」

 

北條さんが働く上で心掛けているのが、基本に対して忠実に職務を遂行すること。

危険が伴う仕事でもあるので、まずは安全を最優先し、高い集中力を保って作業にあたっています。

ちなみに重機作業は肉体労働で大変なイメージが強いですが、実は運転席に冷暖房が完備されており、暑い夏でも寒い冬でも快適に作業ができるとのこと。

「今と変わらず、向上心を持ってこれからも働きます!」

北條さんは力強いまなざしで、今後のさらなるスキルアップに意欲を見せました。

そんな若者たちの力に支えられながら、自然と共生した循環型社会を創出してきたバイオ・グリーン。

近年はグリーン総業を中心に、木を伐採した山々への植林作業も積極的に展開しています。

 

「地球温暖化対策、循環型社会の実現といった部分に自分たちが貢献している、そうした自負心は従業員のみんなが持っていると思いますよ」

再びお話を聞くと、こんな頼もしい言葉を返してくれた佐藤さん。

豊かな自然環境を守り、それらを次の世代につなげていく。

そこには林業に長年携わってきた佐藤さんの、熱い思いが込められています。

「われわれは自然の中で育てられてきましたが、1、2年周期でサイクルが生まれる畜産業とは違って、林業は木を植えてから製品になるまで少なくとも数十年はかかります。そうすると50年、100年先を見ながら事業を進めなければなりません。だからこそ、林業において大切なのが、次の世代に継承していくことなんです。今は管理が大変だと言って山を手放す人も多いと聞きますが、林業の素晴らしさをどのようにして伝えていくかは、これからの大きな課題でもあります」

 

SDGsという言葉が各地で叫ばれる現代社会。

2023年に設立20周年を迎えたバイオ・グリーンの存在意義、企業価値は、今後もますます高まっていくことでしょう。

そこで佐藤さんが次のチャレンジとして捉えているのが、廃材をリサイクル活用した新たな商品の製造開発です。

 

「廃棄物を処理すると、木くずの中に竹が含まれていることがあります。現状だと、木くずはたい肥化することしかできませんが、たとえばこの竹だけで炭を作ることができれば、化粧品にも使えたり、脱臭剤にも使えたり、土壌改良剤にも使えたりと、さまざまな用途で商品を展開できるかもしれません。処理の中で出てきた原料を何かに変えられないかなと、日々模索しているところです」

 

商品開発にあたり、業界の枠を飛び越えてさまざまな職種の人たちと交流を図りながら、新たな可能性を思案しているという佐藤さん。

「もっと資源を活用できる場所を見い出してあげれば、自然も喜んでくれるんじゃないかなと思っています。最初に申し上げた通り、山の利用価値、自然の利用価値を高めることが一番の目標。ただ、それを実現するためには足元がしっかりしていなければいけません。まずは足元を見つめて、土台をつくっていくことが大事だと思います」

 

佐藤さんは会話の端々に「感謝」というワードを口にします。

自然への感謝。お客様への感謝。そして従業員への感謝。

周りに生かされている以上、自然も人も大事に育んでいくことが、会社の成長にもつながっていくと考えています。

そのために頼りとなるのはやはり、次世代の若い力です。

佐藤さんは新たな仲間を心待ちにしながら、こんな展望を描いています。

 

「一番は自然が好きな人。また、重機も使うので機械が好きな人、あとは明るく楽しく仕事してくれる人、夢を一緒に追い掛けてくれるような人に来ていただけるとうれしいです。林業はスパンが長い仕事なので、木々が成長していく姿を若い人たちにはぜひ見てもらいたいし、その枝葉から新しい商品が生まれていく過程をぜひ知ってもらいたい。そうすれば、私たちの仕事をうまく継承していくことができるはずです。自然を循環していくことも大事ですが、これからは『人』の方もうまく循環させていきたいですね」

 

自然と共生しながら、100年先の未来に向かって――。

 

これからもバイオ・グリーンは地域と共に、豊かな循環型社会を創出していきます。

 

(取材:郷内和軌)