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安全第一をモットーに、人々の笑顔を運ぶ

有限会社光正運送 / 中型運転手

インタビュー記事

更新日 : 2024年02月20日

JR一ノ関駅前から車で南下すること約5km。

岩手県と宮城県の県境付近に、有限会社光正運送は社屋を構えます。

 

取材したのは、季節がちょうど秋から冬へと移り変わる頃。

運転手の方々が寒さでかじかんだ手を温めながら、タイヤ交換の作業を行っていました。

有限会社光正運送 事業概要

 

今から約半世紀前の1973年、トラック運送業を展開する有限会社光正運送が設立。

その後、1990年に、観光バス事業を展開する平泉観光が設立されました。

「もともと別の運送会社で働いていた親父が独立して始めたのが光正運送でした。それから平泉観光を立ち上げるわけですが、当時はバブル期だったこともあり、親父も大きな野心とかはなく『バス会社もやってみるか!』くらいのノリで始めたんだと思いますよ(笑)」

そう語るのは、両社で代表取締役を務める昆直城さん。

創業者である父・正光さんの後を継ぎ、現在は2つの会社の経営を行っています。

 

平泉観光のバスはこれまで、地元に訪れた観光客や、東北や関東への団体旅行・修学旅行など、さまざまな人々に利用されてきました。

「2011年には平泉の世界遺産登録でお客様も大きく増えましたし、その流れでインバウンドによる外国人観光客の方々にもご利用いただけるようになりました」

そう振り返る昆さん。地域のにぎわいに大きな役割を担ってきたという自負があります。

 

しかし、安定した業績を保っていた2020年。

新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るい、観光業は大きなダメージを受けることになりました。

それでも2つの会社を走らせていたからこそ、この危機を乗り越えることができたと昆さんは言います。

 

「コロナの期間でいえば、観光バスの仕事はゼロのような状態。しかもそれが3年も続きました。その中でなんとか経営を維持できたのは、トラック運送業の方で売り上げをカバーできたから。ここ数年は燃料の高騰もあってトラック運送業も大変な時期が続いていますが、コロナ禍は徐々に収束に向かいつつあります。また観光バスを多くの人に利用していただければうれしいですね」

そんな昆さんが経営の上で大事にするのは「安全第一」の精神。

売り上げの数字よりも、まずは人々の命を安全に運ぶこと。

それを優先することが、運送会社の使命であると考えています。

 

「バスにしろ、トラックにしろ、命に関わる事故が起これば大問題です。もちろん、誰もが事故を起こしたくて起こすわけはありません。一瞬の気の緩みから、事故は引き起こされるものです。運転手たちには常に気を引き締めて仕事に臨むよう、非常にデリケートに指導しています」

その一方で、厳しい社内ルールを設けず、社員の自由を尊重するのも、この会社ならではの社風です。

そこには、「生き生きと働いてほしい」という、昆さんの素直な思いが込められています。

 

「たとえば車両の管理に関しては、運転手の方々が自発的に洗車などをしてくれます。私の方から、ああしなさい、こうしなさいといった指示を出すことはほとんどありません。個人の考えや自主性はこれからも尊重していきたいですし、それが社員の働きやすさにもつながっていくと考えています」

ちなみに平泉観光にはアルバイトを入れて7人のバス運転手、光正運送には約20人のトラック運転手が在籍しています。

それぞれ年齢は40~50代の方が多いそうですが、昆さんは「社員に恵まれていますよ」と顔をほころばせます。

 

「バスやトラックの運転手と聞くと、荒々しいイメージを持たれている方も多いかもしれませんが、ありがたいことにうちの会社にはそのようなタイプの人はおりません。ギスギスした関係もなく、過去には別の会社に移った運転手がまたうちの会社に戻ってくる、なんてケースもありました。本人たちに直接聞いたわけではありませんが、きっと社員の皆さんには居心地がいい会社だと感じてもらえているはずです」

もちろんその裏には、社員への充実したバックアップ体制があることも欠かせません。

たとえば免許がない場合の、大型バスの免許取得に関する費用はすべて会社で負担。

新入社員を一から丁寧にサポートすることで、働きやすい環境づくりに努めています。

 

「正直申し上げますと、大型バスの運転は興味がないと続けられない仕事です。だけどその分、好きな人であれば一生続けたいと思ってもらえる仕事であるのかもしれません。運転席は1人の空間なので、人とコミュニケーションを取るのは苦手な人でも大丈夫。どんなことでも一から教えるつもりですし、何回も練習をこなせば素人からでも一人前のドライバーになれるので、大型バスを運転してみたいという方ならとにかく大歓迎です」

 

地域に根差した企業として、存在価値を高めてきた約四半世紀。

そして近年では新たな地域貢献の取り組みして、スクールバス事業もスタートさせています。

現在は一関市内の幼稚園、小学校、中学校の計5つでスクールバスを運行。

 

「子どもたちの命をお乗せしているので、より安全には気を付けていかなければいけません」

 

地域の未来を思う昆さんだからこそ、その言葉にも思わず熱がこもります。

そんな光正運送では、いったいどんな人材を求めているのか。

昆さんに聞くと、「あまりこだわりはないんですよね」と前置きしながらも、「やる気」をキーワードに掲げます。

 

「もちろん、業界の経験が豊富な人に来ていただければありがたいですが、先ほども申し上げた通り、未経験の人でもバスやトラックの運転が好きだというのであれば、学歴、性別、国籍も特にこだわりはありません。それに、たとえば一度人生をドロップアウトしてしまったり、定職に就かずフラフラしていたり、そうした人たちでも構わない。働く上で一番大事なのは『やる気』なので、それさえ持っていればどんな人でもOKです」

 

ただしその一方で、最近の世間の傾向を分析しながら、こんな本音もこぼします。

 

「若年層のなり手がいないのが、業界全体の課題でもあります。最近は若くても素晴らしい考えを持った人がたくさんいる中で、そうした有望な人材が他の業種へと流れてしまっている。社員の高齢化も懸念されるこの先、会社自体がどうなっていくのか、多少なりとは不安もあります。若い力も、今後はぜひとも欲しいところです」

 

会社がさらに発展していく上では「いろいろな意見を聞くことが重要」と昆さんは話します。

経営トップとして大切なのは、上の立場から物事を見るのではなく、あくまで社員と同じ目線に立って、フラットに物事を考えること。

そして、そこに若い人たちの力が加わることで、会社だけでなく地域全体の発展にもつながっていく。

昆さんはそんな未来の姿を、自らの経営のキャンパスに描いています。

 

「隣接した地域と比べると、最近の一関市は街自体の活気や勢いがなくなってしまっているなと感じています。にぎわいを取り戻し、住みよい街づくりを進めていくために必要なのはやっぱり、若者たちの熱量です。『こんな会社に入りたい』『ここで仕事をしてみたい』という姿を見せていくこと、そしてこの街に新たな若者の雇用を生み出すこと。それが、われわれに課せられた使命であると思っています」

地域とともに歩み、人々の使命を運んできた光正運送。

新たな時代に向けた挑戦は、これからも続いていくことでしょう。

会社のさらなる発展が、とても楽しみでなりません。

 

 

(取材:郷内和軌)