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世界を見据えて社会を支えるロードサービス

有限会社カーウイングワールド / ロードサービススタッフ

インタビュー記事

更新日 : 2024年07月19日

一関市花泉町にある「有限会社カーウイングワールド」。

車の販売から点検、修理、ロードサービスまで、地域のカーライフに寄り添うまちの頼れる車屋さんだ。

ロードサービスは、普段から車を運転する私たちにとってなくてはならない存在。いざという時、24時間365日、いつでも対応してくれる人がいる安心感は、私たちの暮らしを支えてくれている。

 

カーウイングワールドのスタッフの皆さんは、いつもお客様の安全と安心のために責任を持って日々の業務に取り組んでいる。

「何かあればいつでも対応する」ということは、正直、ハードな業務内容だと言える。

それでもこの仕事を続けている理由とは、何なのだろうか。

有限会社カーウイングワールド 事業概要

岩手県一関市で1999年創業。新車・中古車や車検整備、タイヤ販売、板金塗装、レンタカー、ロードサービスなど、地域に根差したカーライフのトータルサポートを行なっている。

会社を立ち上げた鈴木昭社長は一関市出身。関東と地元のディーラーとして勤務した後に、保険業で独立。その後、お客様や時代のニーズに応えながら事業を展開し、現在に至る。

カーウイングワールドの事務所と工場が一緒になった建物の奥には、レッカー車などが何台も並ぶ敷地が広がっている。

そこで大きなレッカー車を動かす一人の女性。昨年入社した山内舞衣さんだ。

一緒に車を動かす先輩に見守られながら、安全に作業できるようカラーコーンを並べ、周囲に注意を払いながら車を誘導する。安全に車を載せられたことを確認すると、車輪止めをつける。

作業を見ていた先輩からアドバイスを受けると、「はい」と真剣な眼差しで対応する。

カーウイングワールドのロードサービスの一つである車両搬送の現場。そこで感じるのは「お客さまの車に何かあってはならない」という緊張感。山内さんも、一つ一つの作業を的確に、スピード感を持って対応している。

「ずっと車が好きだったんですよ。小さい頃からお父さんがトラック運転するのを見ていて、かっこいいな、いつかトラックに乗ってみたいなって」

 

入社したきっかけは、旦那さんがここで働いていたことから。仕事を見ていて興味が湧き、もともと車好きだったことも重なりパートで働くことになった。

15時半には仕事を終え、保育所に息子さんをお迎えに行って家事をする生活を送っている。

「土日は基本お休みなんですけど、(仕事に)出たいなって思う時もあるんですよ。この仕事になってから、連休とかあると、早く仕事に行きたいって思うようになって。毎日が勉強で、楽しいんですよね」

 

現在の業務内容は洗車や車両のオイル交換、納車準備などが主だったが、最近は中型免許を取得し、レッカーで出動することも少しずつ増えてきたという。

「やりがいは常に感じているけど、現場に出た時は特に感じますね。これまでは補助的な作業が多かったのですが、この間初めてひとりで現場に行ってきました。緊張しましたけど、わからないところは先輩に電話して確認して作業をやり遂げられて、達成感がありました」

そんな山内さんが一番大事にしているのは、「安心・安全」だ。

「お客様の車は大切に扱わなければいけない」と、常に注意を払って作業をしている。そして先輩たちは、そのために何でも丁寧に教えてくれるという。

「この会社の人たちは、本当にみんな優しいので。わからないことは一からわかりやすく教えてくれるし、気軽に聞ける。もちろん現場に出たら危険があるのできつく言われることもありますけど、それは安心と安全を何より考えているから。逆に言われたくなかったら言われないようにやろうって思ってます」

「社長にも安心して現場を任せてもらえるようになりたいなって思います。女性でも、何でもできるんだぞっていうのを見せられたらいいなって。この仕事は体力が必要だけど、気合があればできますよ」

息子たちは、両親の仕事姿を見て「いつかパパと同じ会社に入りたい」と尊敬しているのだそう。そして山内さんの表情と言葉には、終始「この仕事が好きだ」という気持ちが溢れていた。


そんな山内さんを見守り、声をかけていたのは、取締役部長の鈴木聖得さん。代表取締役の鈴木昭さんの息子であり、代表に見守られながら会社を引っ張っていく存在として活躍している。

大学進学で一関を離れ、東京都内で総合建設会社に勤務。2018年に26歳でUターンし、父の会社に入社した。

メインの業務はロードサービスで、レッカー作業で現場に行くことが多い。さらに会社の求人にも力を入れている。

「日頃から、年齢問わず多くの人と交流するようにしています。そこで知り合った方が直感で良いと感じたら、今後のキャリアを考える時にうちに来てもらえないかって声をかける。ダイレクトスカウトみたいな感じですよね。求人応募を待っていても仕方ないので、自分で動いてます」

聖得さんははっきりとした人で、何事にもアクティブ。初志貫徹で、実直な人だ。

「レッカーの仕事は、24時間365日対応しなきゃいけない。最初の頃から慣れるまでは大変でした。今は慣れましたけどね(笑)」

正直な言葉で話す聖得さんの話を聞く限り、仕事内容はやはり大変そうだ。ではどうしてこの仕事を続けているのか。

「お客さんを一番大事にして、大変な中でもその仕事を一生懸命誠実にやり続けることが、一番の近道だからじゃないですか。急にガンと売り上げが伸びても、続かなきゃ意味がないですし。5年とか10年のスパンで考えて、誠実、地道、真面目にコツコツ続ける道が一番楽だと思います」

 

前向きに、そして誠実に仕事に取り組む聖得さんは、仕事と向き合うマインドについてこう話す。

「1人で現場に行って、難しい案件があったときに、自分のスキルと経験と体力を全部駆使して仕事を完遂したときは、自分で自分のことを認め、励ましながら仕事をしています」

「もちろん上には上がいることは意識してますが、働き方も不規則なんで、自分のメンタルは自分で管理しないと。自分で自分を鼓舞して、俺ならできるっしょ、って。5年ぐらいやってるとできてくるんですよね」

 

聖得さんは、仕事に置いて大事にしている価値観が三つあるという。

一つは、先に出た「誠実・地道・真面目」だという。

「もう一つは、信用はお金では買えないということ。もう一つは、悪い報告ほど早くする。何かトラブルが起きた時に、とにかく早く連絡、報告する。起こってしまったものは仕方ないので、あとはどれだけ早く報告してすぐに対応できるかですね」

こうして、根底にある誠実さと信用を築き続ける努力をし続けている。

 

喫緊の課題は、やはり一緒に働く仲間を集めること。ハードな業務をしていく中で、どんな思いを持った人に来てほしいのか。聖得さんは、「今の自分の現状をより良くしたいと思っている人に来てほしい」と話す。

「休みが不規則で休めないとか、給与がもっと欲しいとか。何か考えがあるのであればうちは相談次第で要望に応える。人生1回なんだから、自分の意見を聞いてもらえない会社に時間を割いても意味なくないですか。だから、未経験とかやる気とか関係なく、本当に自分の環境を変えたいならうちに来て欲しい」

聖得さんに、これからの挑戦を聞いた。

「外貨を稼ぐことです。日本の給与の水準は、他国と比べても過去30年で変わっていない。それなのに、物価はここ1年ですごい上がり方をしている。いくら稼いでも物の値段が高い。日本のマーケット、特に地方は厳しくなっていくと思っています」

「だから、今はヨーロッパで現地企業の方と話したり、フィンランドへ実際に行き、電気自動車のことを調べてきたりしています。自分の仕事を通して海外の会社さんと交流を持てるようになったらいいなって思いますね」

地域経済だけではなく、広い視野で今を見つめ、必要なものを取り入れていく姿勢でこの時代に挑む。聖得さんは、海外企業視察の際に、他業種の経営者の方と話すことを通じて、自分の知識のアップデートを常に続けている。

 

最後に聖得さんは、これから一緒に働く人に向けてこう言葉を残した。

「まず、やる。やらない理由を引っ張ってきたり何かを否定するよりも、まずは手を動かしてやってみる。できない理由は誰にでも言える」

「でも現状を変えたいなら自分で手を伸ばして、足を動かして変えていくしかないと思います。まあ、考えないで行動しすぎるのもあんまり良くないですけどね、経験に勝るものはないと思います 」


そんな聖得さんを見守るのが、代表の鈴木昭さん。

一関市内の高校を卒業してから関東と地元のディーラーで勤務後、事業を立ち上げ、時代とともに事業内容を変化させながら一代でこの会社を築いた。

何よりも大事にしてきたのは、安全と安心。お客さんに対してはもちろんだが、スタッフに対してもだ。「車は壊れてもなんとかなるけど、人の怪我は治らないから。命を守る責任があるからね」と言う昭さん。だからこそ、安全で確実なサービスの提供に努めている。

2023年7月には、地域の安全な道路交通に協力してきた企業として、警察署から感謝状を授与されている。

現役時代はバリバリと働いて前に出ていた昭さんだが、今はなるべく表に出ず、聖得さんや現場のスタッフに任せている。その中で、仕事を共にする仲間たちに対してどんな思いで取り組んでいるのだろうか。

「会社には愛情が必要だと考えている。例えば自分の子供だったらどうするのか考えてみる。必要なのは、失敗した時に守ること。会社は人が優先で、そのために会社がある。会社はスタッフがいないと成立しないですから」

「できるだけスタッフ一人一人のやり方や考えを尊重している。人の強みは個性があるからこそ、特性を活かして取り組んでほしい。なぜ今この仕事をしているかを常に考え、最終的に目標に辿り着いて欲しい」

 

昭さんと聖得さんのやり取りを見ていると、基本は聖得さんに任せながらも、ここだけは確実に伝えたほうがいいというラインを見抜き、理由と一緒に丁寧に「こうした方がいいんじゃないか」と伝えている。

聖得さんがアクセル全開で積極的に動き、昭さんがたまにブレーキ役になって、大事なことを聖得さんがしっかりと受け取り、個性を活かして仕事と向き合っているのがよくわかる。

聖得さんにこの後の予定を伺うと、「これから秋田に行きます」と言う。

つい最近起きた豪雨災害で浸水した車を移動させる復旧作業にあたるという。この日も朝に秋田から帰ってきて、また取材を終えたら秋田に向かうそうだ。

「待っている車がいっぱいあるので。普段から長距離運転をしているので、秋田は近いです。じゃあ、ここで。今日はありがとうございました」

 

そう答え、聖得さんは現場に向かう。その姿は、とても頼もしく見えた。

 

 

(取材:佐藤文香)