穏やかな雰囲気のある商店街を歩いていると、「クレープショップMOGMOG」という看板が見えてきます。
市内の学生さんで賑わうこのお店を運営しているのが、「株式会社セイコウタウンプランニング」です。
お店のオーナーであり、会社の代表取締役を務める富川恵さん。
「よく、まちづくり会社だと言われますが、基本的に自分たちがやりたいことをやっている会社です」
株式会社セイコウタウンプランニングは「クレープショップMOGMOG」と「Living Bar Le 333(ル トワトワトワ)」の2つの飲食店を運営しています。
「クレープショップMOGMOG」は、主に学生をターゲットとしており、学校帰りに立ち寄って手頃な価格でクレープを食べられるお店です。
「Living Bar Le 333」は、女性が2軒目に立ち寄りたくなるバーがコンセプト。非日常感を感じさせる、おしゃれな雰囲気のお店です。
ワインからノンアルコールカクテルまで、女性にも飲みやすいお酒やフードメニューを取り入れています。
2店舗とも内装のコンセプトづくりからメニュー開発まで、富川さんが手掛けています。
富川さんは、岩手県花巻市の出身。
仙台の大学を卒業後、大阪本社の商社に就職し、営業事務を担当しました。
結婚・出産を機に、会社を辞め、旦那さんの転勤で一関市に移住することになります。
子育てが落ち着いてからは、市内で事務職として働き始めます。
その後、経済団体職員となり、一関商工会議所青年部へ入会。
シャッター街を賑やかにしようと、2014年に一関商工会議所青年部の有志で、クレープショップMOGMOGをオープンします。
その当時から青年部に所属していた富川さんも、お店の運営を手伝っていました。しかし、有志だけでの運営は厳しい部分もありました。
そんな中、富川さんは本格的にお店を運営するために、お店の経営譲渡を受け、仲間と共に運営母体となるセイコウタウンプランニングを立ち上げます。
もともと飲食業の経験はなく、飲食業も会社の経営も、全て独学だという富川さん。
「いろいろな仕組みを知りたいし、何でも自分でやってみたくなる性格なんです。だから、自分にとって未知の分野でも挑戦できているんじゃないかな」
富川さんがチャレンジできているのは、青年部や会社の仲間の存在も大きいといいます。
「青年部で異業種の人とつながり、経験したことが、視野を大きく広げてくれました。自分が何かしようと思った時や困った時に、頼りになる人が周りに沢山いる。だから今、自分は豊かだと思っています」
「そんな風に思える人を、まちにどんどん増やしていきたいですね」
クレープショップMOGMOGのスタッフの一人、千葉久美さん。
3年前に、このお店の求人を見つけて入社しました。
「飲食店での勤務経験はあるものの、クレープ屋は初めてでした。1人何役もやるので、入社した頃はもうてんてこまい。今はだいぶ慣れました」
クレープは、クリームやアイスが入ったスイーツメニューから、お肉や野菜が入ったデリカメニューまで様々。焼けたクレープ生地の香ばしい匂いが、店内に立ち込めます。
取材中もお客さんが来店すると、注文を取るところからクレープを焼き、商品を渡すまで、全て1人で対応している千葉さん。テキパキと仕事をこなす姿は、とても頼もしく見えます。
「複数の注文を受けたり、出来上がりまで何分かかるかを頭の中で計算したりと、次のことを考えながら同時並行で作ります」
オーナーの富川さんからは、「どんな小さいことでもいいから、なんでも相談して」と言われているそう。
千葉さんが富川さんに提案したことで、変わったこともあるといいます。
「クレープの中のソースの量が少し多いかな?と、お客様の反応を見て気付いたことがあって。オーナーに相談し、ソースの量を少し減らしてみたんです」
「そうすると、以前よりも注文が増えて。お客様の良い反応が見えると、やりがいにつながりますね」
お客さんとは普段、どのように交流しているのでしょうか。
「イートインのお客様には、クレープを席まで持っていく時に、積極的に話しかけるようにしています」
「それと、店内に黒板がありますよね。お店に来てくれた学生さんや家族連れの方が、イラストをよく書き込んでくれるんです。私もイラストをたまに書いたり、お店のInstagramにも黒板の写真を投稿しています。お客様との良き交流の場になっていると思います」
千葉さんがつくったクレープを、お店の中でいただきました。生地のもちもち具合とクリームの甘さがバランス良く、最後までクリームが入っていて満足感があります。
食べた感想を伝えると、千葉さんは目を輝かせながらこう話します。
「どこを食べても美味しいと思ってもらいたいので、クリームや具材を入れる位置にもこだわっています。『最初から最後まで全部美味しかったです!』とお客様に言ってもらえると、ガッツポーズしたくなるほど嬉しいですね」
続いて向かった先は、「Living Bar Le 333」。
商店街の裏路地を進んでいくと、あたたかなランプの光と白いドアが見えてきます。
お店のドアを開け、「いらっしゃいませ!」と明るい声で出迎えてくれたのは、スタッフの美和くららさん。
2021年12月に入社し、お店に入ってちょうど1年になります。
お店のメニュー表を見せていただくと、お酒の種類が豊富なのはもちろん、フードメニューにも力を入れていることが分かります。
お酒に合うおつまみ系から、地元の食材を使った食事系のメニューまで取り揃えています。
お店で用意するお酒は、ワインを中心に、カクテルや日本酒、ノンアルコールカクテルなど多種多様。
看板商品のワインは、特に種類が豊富で、お客さんからおすすめのワインを聞かれることも多いといいます。
「ワインは人によって好みが分かれるので、お客様との会話を通して、どのお酒が合いそうか考えてから、おすすめしています」
「選んだワインがお客様の好みにヒットして『美味しいね』と言われると、嬉しいなって思いますね」
美和さんは、十数年の飲食店勤務の経験をフルに活かして、お酒づくりからフードづくりまでを行う、オールラウンダーな方です。
これまでの飲食店では、大人数のスタッフでお店を回すことが多く、担当業務は分業制でした。美和さんは、「今の少人数スタイルの方が楽しい」と話します。
「なんでも手をつけたくなる性格なので、フードもお酒も接客もできる環境は、とてもやりがいがあります」
「それに私、忙しい方が好きなんです。洗い物が溜まっているのを見ると『やるぞ!』って俄然やる気が出るタイプ。忙しければ忙しいほど、仕事が終わった時の達成感がありますね」
会社に入る前の、お店の印象はどうでしたか?
「何よりも、『おしゃれなお店!』という感想が一番ですね。女性にとってテンションが上がるような雰囲気づくりをされていて、お店に入った瞬間、感動した記憶があります」
「それと、業務内容を聞いた時に、飲食経験のある自分の強みを、ここなら活かせそうだなと思いました。お客様と会話をするのも、料理もお酒もつくるのも、すごくやりがいがあって楽しいだろうなって」
オーナーの富川さんとは、2人でお店に立つことも多いそう。
「何か思いついたら、オーナーによく相談するようにしています。例えば、仕事を効率よくできるように、物の配置を変えたり、導線づくりを提案したりしました。オーナーも『美和さんがやりやすいようにやっていいよ』って言ってくれるので、お言葉に甘えて好きなようにやらせてもらっています」
「スタッフのことをいつも気にかけてくれて、優しくて、お母さんみたいな人です」
女性が社会に出ていくことを応援したい。
そんな強い思いが、富川さんにはあります。
「例えば、雇用の場をつくったり、起業のノウハウを教える場を提供したり。子育てから復帰したいママや、起業を目指す女性に、一歩後押しする機会をつくりたいんです。そうすれば、もっと社会に出る女性が増えていくんじゃないかな」
その思いは、スタッフに対する接し方にも表れています。
クレープショップMOGMOGのスタッフ・千葉さんは、もともとは人前に出ることが苦手でした。
「自分に自信をもってほしい」と思った富川さんは、なんと化粧の仕方から車の運転免許の取得まで手厚くサポートしているそう。
「スタッフが幸せであること。それが、私の役目だと思っているので」
現在、2つの飲食店を運営するセイコウタウンプランニング。
今後やっていきたいことを聞いてみました。
「『Living Bar Le 333』もそうなんですけど、女性がまちに出る機会をもっとつくりたい。美容系サロンやパーソナルジム、大人の習い事など、女性にニーズのある事業を展開していきたいですね」
「小さなことではあるんですけど、自分磨きをすることで、自分に自信がつくと思っていて。そういった『キラキラした女性』を増やしたいんです」
女性が社会に出る場をつくり、キラキラした女性がまちに増えることで、まちが賑わっていく。
それこそが、富川さんが思い描くまちづくりだといいます。
「女性の強みって、新しいものを生み出せること。女性がまちで活躍することで、女性の意見がもっと取り入れられて、まちに大きな変化が生まれていくと思います」
そんな富川さんが会社に求める人は「挨拶ができる人」だと言います。
「ちゃんと挨拶ができる人は、人に心を向けられる人だと思っています。そういう人は、誰かの幸せを考えられる人なんです」
「例え、今は自分に自信を持てていなくても、変わりたいという気持ちがある方はウェルカムです」
また、富川さんと一緒に女性が活躍する街や環境をつくっていきたいという人にも来てほしいと言います。
「嬉しいことに今、いろんな仕事をさせてもらっていますが、そういった時に、一緒に考えたりつくっていける右腕のような方がいたら、嬉しいですね。その人が最終的に、まちで起業してくれても良いなとも思っています」
会社で働く人も、まちの女性も、輝ける社会を目指して。
これから自分を変えたい人にとっても、社会を変えていきたい人にとっても活躍できる場だと思います。
取材:足利文香