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創業以来伸び続け、物流業界を牽引する企業へ

株式会社アンカーライン東北 / インタビュー

インタビュー記事

更新日 : 2023年11月13日

東北自動車道を平泉・前沢インターチェンジで降りてすぐの前沢インター工業団地。

高台の工業団地に登ると、トラックが行き交う先に白い大きな物流倉庫と社屋が見えてきます。株式会社アンカーライン東北です。

株式会社アンカーライン東北 事業概要

【株式会社アンカーライン東北】

アンカーライン東北は、岩手県南を拠点に、北は北海道、南は九州まで、多種多様な荷物を届ける運送会社です。

2010年に創業し、わずか5台のトラックではじまった事業は、約10年で急成長。現在では、グループ会社の株式会社奥州物流・株式会社中東北運輸も含めると、売上16億、従業員120人、トラック100台の規模になりました。

モットーは「安心・安全・確実」。お客様のニーズに合わせた高品質な運送サービスを追求し、信頼を築き上げ、成長してきました。

会社を立ち上げたのは、代表の佐藤光美(みつよし)さん。事務所に伺うと、気持ちの良い挨拶と、親しみのある笑顔で出迎えてくれました。

一関市で生まれ育った光美さんは、高校を卒業後、陸上自衛隊に入隊。その後、上京し、アルバイトを転々としながら貯金。20歳のとき、貯めたお金で中国へ飛び立ち、リュックひとつで1ヶ月間放浪の旅をしました。

中国から戻ると、たまたま佐川急便の求人募集の情報を見つけたのをきっかけに入社します。ドライバーとして10年働き、31歳で管理職に。県内外への転勤も経験して、物流業界のいろはを学びました。

佐川急便時代から、光美さんは常に「“効率よく、早く、楽に”作業を進めるためにどうすべきか」を考えて仕事をしてきました。当時はまだ珍しかった軽自動車での配送を提案したり、独自の配送ルートを設定してより早く荷物を届けたりと、次々に行動を起こしました。

「お客様に早く・安く・安全に届けるためには、作業効率を上げる必要がある。だから常にベストな方法を追求し続けていました」

「支社の許可なく荷物の仕分けのアルバイトを雇って実験してみた時には、相当怒られましたね(笑)お前、またやったな!って。そんなことがしょっちゅうでした」

その努力が実り、光美さんが勤めていた営業所は、全国の売り上げランキングトップ10に10年連続で入り続けるという、輝かしい成績を残しました。

お客様のニーズに応えるために、既存の方法にとらわれない柔軟な発想と行動力で売り上げを伸ばしてきた光美さん。勤続20年が経ち、「自分で会社をやってみたい」という思いが湧いてきました。そしてついに41歳で退職し、2006年に独立し、今に至ります。

一関市内で「株式会社アンカーライン東北」を創業。最初は、従業員5人とトラック5台で事業を始めます。

しかし、創業した翌年の2011年3月、東日本大震災が発生。すべてのインフラが止まって物流も動けない状況でした。混沌とした状況の中で、知り合いの社長から「避難所に物資を届けて欲しい」と頼まれます。

なんとか応えたいという思いで、がれきを退けて作った不安定な道を走り沿岸地域に物資を届け続けました。当時は3ヶ月休み無く働いたそうです。

震災後に物流の需要が高まった背景もあり、1年目、2年目、3年目と徐々に売り上げを伸ばします。奥州市に拠点を移してからは、業績がさらに向上し、急成長していきます。

光美さんが大事にしているのは、「相手のニーズを汲み取り、最適な配送サービスを提案して行動すること」です。

「この人は何を望んでいて、今後どうなったらうれしいんだろう。それを汲み取るんです。喜んでもらえそうなことを考え、お互いにメリットが生まれる案を、こちらから提案しています」

「今でも、トラックに乗ってお客さんの所に行くんです。その場で『ここは何で困っているんだろう。やり方なのか、人なのか、時間なのか』って常に考えています」

ただ荷物を受け取って届けるだけでなく、常にベストな方法を考えて行動する。そんな光美さんの指針は、前職時代から変わらず在り続けています。

また、お客様に信頼してもらえるように日頃から従業員に伝えていることがあります。

「前職時代からドライバーに伝えているのは、『俺たちにとっては何百個とある荷物でも、お客さんにとっては大事な一個の荷物なんだよ』ってこと。忙しい時は早さに意識が向いて作業が雑になってしまうことがある。忙しい時こそ丁寧にやるように伝えてます」

「最後に生き延びるのは品質。そこをしっかり大事にしていれば、必ず理解してくれるお客さんがいる。そう信じて仕事をしています」

その思いは、会社のロゴにも映し出されています。安心・安全に運転する意を込めて信号の色を使った3本のライン。会社名には、リレーのアンカーのように、最後まで責任を持って荷物を届けるという意味が込められています。

 

2017年に入社した長田竜太さんは、長距離ドライバーとして全国を回った後、今年の春から配車業務を担当しています。

誰がいつどこへ荷物を運ぶのか、どのルートで荷物を届けるかなど、ドライバーとコミュニケーションを取って調整する仕事です。

長田さんも佐川急便に10年勤めた経験があり、光美さんは当時の上司でした。

「あの頃社長に出会っていなかったら、こんなに仕事を楽しいと思えていなかった」と話すほど、お世話になったそう。昔からのご縁で入社することになりました。

「仕事の師匠であり人生の先輩で、信頼できる社長なんです。こんな田舎でも、これくらいの規模の会社を築けるって、すごいなって」

「目先のことばかりじゃなくて、3年、5年、10年先を見て行動している。昔から常に前を向いて進んでいる姿を見ていたから、入社したいと思ったんです」

入社後は長距離ドライバーとして経験を積んだ長田さん。北は北海道、南は九州まで、さらに離島への配送も経験してきました。

「私はいろんな場所を見て回るのが好きなので、長距離を希望しました。運行に差し支えない範囲であれば好きなことをしていいと言ってくれる社長なので、トラックを停めて近場を歩いて、綺麗な景色を見たり、道の駅に寄ってみたりしてました。現地の美味しいものを食べるのも楽しみでしたね」

アンカーライン東北では、ドライバーの希望によって関西以南を担当する長距離、関東から中京エリアを担当する中距離、県内と近県を担当する短距離があり、100%本人の希望で決まるそうです。家庭環境やその人の特性に合う方法で働くことができます。

「例えば、子どもがいて毎日家に帰りたい人や、年齢を重ね、体に負担がかからないようにしたい人は短距離にしたり、運転が好きでいろんな土地を見てみたい人は長距離にしたり」

「自分の好みやライフステージに合わせて選択できる仕組みがあるのは、運送業界でも珍しいんじゃないかな」

長田さんに、この仕事に向いているのはどんな人か尋ねると、「一番は運転が好きなこと。それから、うちは常にやりたいことに挑戦していける環境があるので、成長したい人にはぴったりの職場」と教えてくれました。

 

アンカーライン東北では、新人育成にも力を入れています。

23歳の佐藤優真さんは、取材当時、入社して2週間程の新人ドライバー。物流業界は未経験でしたが、思い切って入社しました。

「もともと運転が好きで、自家用車で青森県までドライブしたりしていました。長距離運転するのが楽しくて、好きなんです。今は優しい先輩に教えてもらって、楽しみながら仕事ができています」

トラックはマニュアル車がほとんど。優真さんは、自家用車がオートマ限定車のため、不慣れなマニュアル運転に最初は苦戦したそう。先輩に助手席に乗ってもらい、練習しながら少しずつ慣れたと言います。

「運送業は運転するだけでなく、荷物の積み降ろしには体力も必要なんですよね」

そう話すのは、優真さんに仕事を教えている佐藤爽太郎さん。入社8年目のドライバーで、現在はトレーナーとして新人教育も担当しています。

「最初は自分が運転や作業をして側で見てもらって、その後は彼が運転するトラックに乗って、一緒に作業をしながら覚えてもらっています。積み下ろし作業が簡単なトラックから任せたり、走行距離を徐々に伸ばしたりして、独り立ちできるようにサポートしています」

アンカーライン東北には、慣れるまで先輩がマンツーマンで教えてくれる環境が整っています。

経験を積んで、将来的には長距離ドライバーをやってみたいと話す優真さん。自分の希望に合わせてスキルアップしていくことができるのも、魅力の一つです。

また、独立する人への支援も行なっています。

社長の光美さんは、トラックを譲ったり、立ち上げの資金を融資したり、仕事を渡したりと全面的に協力し、過去には3人独立しています。その支援のかいもあり、3人全員の事業が軌道に乗り、今も成長し続けているそうです。

光美さんは「軌道に乗るまでの最初の1年は手も口も出しますが、その後どんな会社にしていくかは本人次第。頑張れよ、と応援する気持ちで送り出している」と話します。

会社をここまで育ててきた光美さんに、仕事でやりがいを感じる瞬間を聞いてみました。

「うれしいのは、ドライバーが結婚して家を建てたとか、車を買ったって報告を受けた時。モチベーションが上がりますね。うちの会社に勤めて、家を建てられる。それくらいの給料を払えていることに、喜びを感じます」

燃料が高騰する昨今、運送会社の4社に1社が潰れているとも言われています。その中で生き残り、成長を続けることは、決して簡単ではありません。目の前にある課題に対し、諦めるのではなく改善する方法を考え抜く企業だからこそ、ここまで成長してこれたのだと思います。

アンカーライン東北は、他の会社と連携して北上市に中継地点となる物流倉庫の設置を計画中です。業界全体の課題に向き合い、より効率的な物流の仕組みづくりにチャレンジしています。上手くいけば、全国への展開も考えられると言います。

 

お客様のニーズを汲み取り、より良いサービスを提案し続けるアンカーライン東北。

これからもたゆまぬ努力を重ね、成長していきます。

取材:佐藤文香

 

【沿革】

・2023年3月 株式会社中東北運輸 事業所移転 [岩手県一関市滝沢字矢ノ目沢へ][テント倉庫200坪 増床]

・2024年   株式会社奥州物流 本社移転 [岩手県北上市相去赤坂へ][敷地面積2600坪][事務所、テント倉庫、アパートで300坪 増床]