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目指すのは「水道屋らしくない水道屋」

有限会社アルファー住設 / 現場作業員

インタビュー記事

更新日 : 2023年07月07日

「水道工事の仕事」と聞いて、どんなイメージを持ちますか?

「体力を使いそう」「何となく大変そう」など、さまざまな感じ方があると思います。今回紹介する「有限会社アルファー住設」は、そんな私たちが持つ「水道屋」のイメージとは少し違う会社です。

有限会社アルファー住設 事業概要

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有限会社アルファー住設は、住宅の上下水道を配管・修繕したり、バス、キッチン、トイレなどの設備を取り付けたりと、水周りの工事を行う設備会社です。

岩手県奥州市水沢に事務所を構え、代表を含めた若手メンバーを筆頭に、岩手県南エリアで水回りのプロとして活躍しています。

「水道屋らしくない水道屋でありたいと思っているんですよ」

そう話すのは、代表取締役の斉藤智也さん。

まるでデザイン会社のようなおしゃれな事務所や社員の皆さんが着ているオリジナルの作業着からは、一般的にイメージするような水道屋とは違う印象があります。

有限会社アルファー住設は、1995年に創立した会社で、斉藤さんで3代目。実は現場からのたたき上げで社長に就任した斉藤さん。会社を経営しながら、今も日々現場にも出て汗を流しています。

「現場作業はもちろん、日中の作業予定を組んだり、元請けさんとのやりとりの調整をしたり、お金の管理をしたりと、毎日幅広くいろんなことをしています。業務の割合では現場に出ていることが多いですね」

 

入社当初から現場作業で技術を磨いてきた斉藤さんは、当時を振り返ってこう話します。

「最初は、覚えることが多すぎて圧倒されていました。設備の種類も工具もたくさんあるし、午前中は土の中で汚れながら作業して、午後からは新築の現場で綺麗な格好をしてお客さんの対応をする。業務内容が幅広いので、勉強の日々でした」

斉藤さんは先輩の現場に付いて回って少しずつできることを増やしていきました。それでも覚えることの多さに挫折したと言います。

「ここに入社するまで仕事を転々としていたのもあって、打たれ弱くて。行きつけの寿司屋に行って『俺はこんなことできない』って泣いてましたね(笑)」

「でも、仕事の内容は楽しかったんですよね。できることが増えるたび自信になっていたし、成長している実感がありました。それに、先輩方が『大丈夫だ、俺がいる』って優しくしてくれたんです。だから続けられたんじゃないのかなって思います」

こうして14年のキャリアを積み重ねた斉藤さんは、2019年に代表に就任します。

社長業は0からのスタート。何もかも分からない中で、過去の業績を可視化したり、労働環境の改善に努めたりと、試行錯誤しながら少しずつ会社を育ててきました。そんな中で欠かせなかったのが社員の皆さんの存在です。

「ほかの業者さんが絡んでいる工事も多いので、責任を持ってきっちり納めないといけない。その責任感を社員一人ひとりが持って動いてくれています。例え何かできないことがあっても、自分たちでその対処や対策を考えてくれるので、とても助かっています」

そんな社員たちのために、斉藤さんは少しでも働きやすい会社を目指そうと、日々労働環境のアップデートを実現させています。作業着の新調、事務所の新設、昇給や退職金の制度を制定、今後はタブレットとクラウドを活用した図面の管理も行なっていきたいと言います。

「現場仕事は体力的にきつい仕事です。その部分は変えられないけれど、毎日出勤したくなる綺麗な事務所であるとか、作業着がカッコいいとか、給料やボーナスが良いとか、仕事内容とはまた違う魅力があったらいいんじゃないかなと思っています」

社員の方から業務や職場環境の改善を提案されることもあり、それを柔軟に受け止めて反映していくそうです。少人数の会社だからこそできる柔軟なコミュニケーションによって、さらに働きやすい会社を目指します。

 

次にお話を伺ったのは、2021年に入社した及川さん。

前職の営業マンからアルファー住設に転職し、今は現場作業を担当しています。

「今は先輩に付いて回りながら、便器やキッチンの流し、洗面化粧台などを新築やリフォームの住宅に取り付けたり、壊れた配管を直したりしています」

及川さんの一日は、朝8時の出社から始まります。工具や材料、図面などを持って現場に向かい、午前中の作業を終えたら12時に事務所に戻り、休憩室でご飯を食べます。13時にはまた現場に向かって作業を再開し、17時には事務所に戻って日報を作成。作業が早く終わった日には、翌日の作業に必要なものを準備し、17時半頃に帰宅するそうです。

「大体は決まった時間に終わらせます。日が暮れたら作業ができなくなってしまうので、効率良く段取りをして全ての作業を8時から17時までに終わらせる必要があります。だから、そもそも残業ができないんですよね」

及川さんは、お客さんとコミュニケーションを取る営業職から、現場と向き合う仕事へ転職しました。その変化をどう感じているのでしょうか。

「面白いですね。例えば、自分で考えた配管が上手くいくと達成感があります。最近は、先輩について周りながらも、ちょっとずつ任せてもらえることが増えてきたので、楽しいです」

「自分で考えて動くのが好きな人や、きっちりしている人、ものづくりが好きな人はこの仕事、楽しいと思います」

また、現場での作業を丁寧に教えてくれる先輩に感謝していると言います。

「普通、失敗したら怒るところを、『失敗しながら学んで成長すればいい』と言ってくれるんです」

「一度任せてくれて、挑戦して間違える時もあるんですけど、『ここがこう違うから、もう一回やってみて』と見守りながら教えてくれて。萎縮せずに挑戦できています。いい先輩に恵まれたなと思いますね」

 

入社して5年目を迎える専務取締役の今野匠さんは、主に水道の図面設計を担当しています。そのほか現地調査や工事許可のための申請書や見積もりなどの書類の作成、工事に関する役所との打ち合わせや申請など、工事を始める前に必要な業務を幅広く担っています。

以前は県内の金融機関に勤めており、10年近く勤めた前職を辞めて、思い切って設備工事の業界に飛び込みました。そのきっかけは、先々代が手書きしていた設計図面でした。

「今はほとんどの図面をパソコンのCADソフトを使って作成する中で、当時、先々代は手書きで図面を書いていたんです。当時、奥州市には2人しかいないと言われていました。その図面がすごく綺麗で。パソコンで作成したものと遜色ないくらいでした」

「それを見て、図面を描くってかっこいいなって思ったんですよ。そもそも建築だけでなく水道にも図面があることも、そこで初めて知りました。そこから興味が湧いたんです」

未経験からスタートした今野さんも、今では数多くの仕事を経験し、設計士として活躍しています。

「一概には言えませんが、うちは少人数の割に、現場の数はかなりこなしていると思います」

「外から見たら、事務所を新設したこともあり『儲かっている会社だな』と見られることもあります。けれども、その背景には、従業員一人ひとりの努力があると感じています。質が良く、かつ効率的な仕事をするために、それぞれ考えて努力している。だから、ここまで来れているんだと思います」

従業員の皆さんの仕事ぶりに厚い信頼を置いているのが伝わってきます。

今野さんいわく、代表の斉藤さんは、労働環境や業務内容について従業員から提案や相談があった時、柔軟に受け止めて反映しているといいます。

「私と社長はほぼ同い年なんですけど、社長って、何というかこう…『ほんと良い人」なんですよね(笑)」

「こうしませんかと相談すると、話をちゃんと聞いてくれる。ほかの従業員も含めて、相談しやすい距離感ができているので、柔軟に話し合って改善していけるのだと思います」

社長の人柄の良さ、そして少人数の会社だからこそ、社員一人ひとりの意見が尊重されています。

 

誠実な仕事ぶりと技術力が評価され、信頼と実績を積み重ねてきたアルファー住設。代表の斉藤さんは今後会社をどのように育てたいかと伺うと、意外な答えが返ってきました。

「会社を大きくしたいっていう訳ではないんです。上に伸びるのではなく、横に広がっていきたい。一気に案件を増やしすぎてもほかのクライアントに迷惑がかかるので、できる範囲で、無理せず地道にやっていけたらと思っています」

今野さんも、少しずつできることを増やしてあらゆるお家の困りごとを相談しやすい会社にしていきたいと話します。

「一般住宅の設備に特化した資格や技術を身に付け、あらゆる場面に対応できるようになりたい。企業さんからも、個人の方からも、『困ったらアルファーさんに頼もう』と思ってもらえるような仕事をしていきたいですね」

誠実に仕事と向き合い、着実にできることを増やして成長していく。その姿勢がお客さんや取引先の方々から信頼される理由なのだと思います。

 

斉藤さんは、業種未経験でも、腐らずにやろうとする人に来てもらいたいと話します。

「初めてのことはできなくて当たり前。そんな中でも『次も頑張ろう』と思える人、メンタル面で腐らない人、ですかね。うちにはそういう人たちが集まっているので。ダメだったら次はこうしようとか、考えて行動できる人にぜひ来てもらいたいです」

斉藤さん自身もくじけそうになった過去があり、先輩方に支えられながら諦めずに前を向いてここまで来ました。失敗してもいい。そこから考えて、たくさん学べばいい。

社長も含め、みんなが未経験から始まっている会社だからこそ、日々の仕事の中で経験を積める環境がアルファー住設にはあると思います。

 

 

取材:佐藤文香