※この記事は、岩手と学生を繋ぐ関係人口創出プロジェクト「わたしといわての研究所」のゼミの一環で、学生が制作しております。
イワイズカンのエリアの一つ岩手県一関市は、東北地方の中央に位置し、多くの山々に囲まれています。また、一関市は全国でも上位に入るほどの面積を有し、香川県の4分の3にあたる1256㎡で、かなり広いです。
一関がこれだけの広さの面積になった背景には、市町村合併があります。8市町村が合併したために、1つの県並の大きさになってしまったのです。
一ノ関駅は新幹線や電車、バスが集まり、外からのアクセスは良好です。一方、地域内の移動は大変な印象。
厳美渓や猊鼻渓などの観光地に行くためには約9km以上の距離があるので公共交通機関が必要です。
実際に路線バスの時刻表を眺めてみると、仙台や東京などの都市部と比べると、本数は少なく、1日に行き帰り4本の路線も少なくありません。
このエリアへの移住を考えた時にやはり車は必要なんでしょうか?
疑問に思ったので、実際にバスにも乗り、地域の人や市役所の人に話しを聞き、調べてみることにしました。
まずは、実際にバスに乗って、ある有名な観光地に行けるかやってみました。
出発地は一ノ関駅、目的地は観光地「猊鼻渓」です。バスのみで目的地まで向かうことにしました。
一ノ関駅のバス停の7番から出るバスに乗り、約40分かけて猊鼻渓がある猊鼻渓口のバス停まで到着一ノ関駅から猊鼻渓口のバス停までは630円です。
猊鼻渓のそばにバス停があるので猊鼻渓に向かうだけならば難なく向かうことができました。バス一本で一ノ関駅から観光地である猊鼻渓に向かうことは可能です。
しかし、ここで問題が発生!一ノ関駅に向かうバスが4時以降無い!
これでは帰ることができません。
バスの本数の少なさを実感しました。
バスの利用者も極端に少ない。猊鼻渓口までの人数を数えたところ、取材スタッフ2人を含めて、乗車人数が4人しかいませんでした。
一ノ関駅のバス停で一緒に待っていたおばあちゃんにお話を伺ったところ、その方は摺沢駅まで向かうといっていましたが、普段はバスをあまり利用しないとのこと。
次に、一関市の公共交通の担当者の方にもお話を伺いました。
このようなバスの本数になっている原因として、車社会の進展と人口減少等によるバスの利用者の減少があるとのこと。
新型コロナウイルスの影響もそこに重なり、さらなる利用者の減少、減便などのサービス低下と負のスパイラルに陥っているようです。
そこで一関市が行なっているのが、デマンド型乗合タクシーです。このデマンド型乗合タクシーは、市営バス路線の乗車人数が少なくなっている路線を再編し、新たに一部地域で導入したもの。
予約制の乗合タクシーで、自宅付近の公道まで迎えに来てもらうことができ、そこから乗ることができます。また、決められた地域内であれば、300円で移動することができます。
高齢者の目線で考えると、市営バスよりもデマンド型タクシーの方が利便性が高いように思えます。デマンド型乗合タクシーが、市営バスの足りない点を補っています。
しかし、一関市の担当者によると、そんなデマンド型乗合タクシーですら課題があるそう。
まず普通のタクシーでは、お金を払うことで様々な場所に移動することができますが、デマンド型乗合タクシーでは、決められたポイントに行くことしかできません。
また、予約可能な時間が決まっていて、いつでも来てもらえる従来のタクシーと比較してしまうと不便に感じるところがあります。
一関市の担当者によると利用者の多くが高齢者であるため、電話での予約が難しいと言う声も届いているそう。
また、一関市におけるデマンド型乗合タクシーの認知度が低い印象を受けました。
猊鼻渓行きのバスで一緒に乗ったおばあちゃんに「デマンド型タクシーを知っていますか?」と言う質問をしたところ、「わからない」という返答がきた。なので、利用促進のためにPRをしていくことが必要となる。
お話を伺ったところ、自治体も試行錯誤を繰り返して、公共交通をより良くしようと様々な努力を重ねていました。
このエリアで車なしでの生活を目指すにはもう少し時間がかかりそうです。移住の際は、車の費用も見込んだ生活設計をオススメします。
取材 及川宙