川の街のなんでも相談所
NPO法人北上川サポート協会 金野和則さん川の街のなんでも相談所
NPO法人北上川サポート協会 金野和則さん「住みやすい街の条件」といえば何を思い浮かべるでしょうか。
交通アクセスや景観、周辺環境であったり、子育てがしやすいか否かを重視する人もいるかと思いますが、それらに並んで重要なのが「地域の協力者」ではないでしょうか。
悩みの相談ができる場所や、そこに住む人々と親交を深める機会というのは案外限られているものです。
だからこそ、岩手県一関市川崎町に、長年活動を続ける心強いサポーターの存在があることをぜひ知っていただければと思います。
一関市のほぼ中央にある川崎町。町の中心部を流れる北上川は東北最大の河川で、長さや流域面積ともに東北一を誇ります。
川に架けられた巨大な北上大橋はまさに町のランドマークと言えるもので、北上川を中心に広がる街並は、自然と地域が調和しながら発展した地域であることを伺わせます。
そんな川崎町の北上川が流れるすぐ隣に、『川崎防災センター』という建物があります。そこで長年地域のために活動を行っているのが、『特定非営利活動法人 北上川サポート協会』です。
北上川サポート協会で19年間活動を行っている、理事兼事務局長の金野和則さんにインタビューしました。
金野さんの若々しく日焼けした肌とそのたくましい腕は、まさに日々の活動を物語っているようでした。
金野さんは地元である川崎で毎年行われるボートレース、『Eボート大会』のスタッフをはじめとして、NPO発足前から27年もの間、北上川でのイベントや活動に関わり続けてきました。
「川とは結構長く付き合っています。苦労もさせられているし、楽しさももちろんもらってますよ」
Eボート大会の運営も含めて、サポート協会の事業は非常に多岐に渡ります。
国から委託された定期的な河川調査や、川沿いのゴミ掃除や草刈り等の環境保全活動も年間を通して行っています。
その中でも何より力を入れているのが地域の住民や子供たちを対象としたイベントの実施です。
川崎のみならず一関市内の小中学校からオファーを受けることも多々あり、小学生を対象とした川遊び活動や水生生物調査、中学生には主に親子レクリエーション活動のカヌー体験などを行っています。
「今では『川は危ないから近づくな』と言われているのでしょうが、川は危ないから駄目、というのは逆に言えば『ルールを守って安全に遊べば大丈夫』ということでもあるんです」
「子供たちにとってもライフジャケットを着て川に入るというのはこの時しかないですし、最初は怖がっていても何回もやっているとはしゃぎすぎなくらい楽しんでいるんです。こうしたイベントを通して、自分の命を守る工夫を体感してもらいたいと思って取り組んでいます」
そう語る金野さんにとって、やりがいを感じる瞬間はやはり活動を通して子供たちが喜び、笑顔を見せる時だといいます。
このように、子供たちのことを考えて様々な取り組みをしているサポート協会ですが、決して川での活動のみがすべてではありません。
6年前からは川の活動と一緒に何か出来ないかと『水辺のマルシェ』というイベントを行っています。今年からはリサイクル資源や子供服のおさがり回収・譲渡の場を設け、子育て世代に貢献しています。
「川に興味の無い人もここに買い物に来てもらって、そして上から下、陸から川というように下りてきてもらって、そこでも楽しんでほしいですね」
ここ数年は新型コロナウイルスの流行によって規制がかかり、アクティビティやイベント開催が中止されることも多々ありました。それでも感染対策を徹底した上でこれまでにないイベントを考案し、挑戦し続けてきました。
また、ただ参加者としてだけではなく、スタッフとして地域を楽しむこともできます。
北上川サポート協会の協会員は現在、20代から70代の方まで、47人。定期的に活動に参加しています。もちろん、誰でも気軽に参加することができます。
「できる範囲から、無理せず参加してもらいたいと思っています」
「体験のボランティアからでもいいから、まずはどんなことをやっているのかを知ってもらえればいいなと思います。『制約や強制は無し』でやっているので、とにかく自分の都合と折り合いを付けながら、顔を出せるときに来てもらってスタッフとして楽しんでほしいです」
「UIターンを望む方々に伝えたいことはありますか」と伺うと、こんな言葉をくださいました。
「初めて川崎に来た人でも、なにかあったらここに相談してもらえればいいなと思います。実際に困りごとがあって相談に来る方もいますね」
「私たちもお悩みにお答えしますが、協会員には色々な職業の人たちもいます。建築関係の方も和尚さんも、北上川サポート協会の一員なので、その皆さんが助けてくれます。相談窓口といえば市役所を思い浮かべる方も多いと思いますが、ここはより気軽に相談できる地域の窓口になれるんです。そういう地域の場所というのは大切なものだと思っています」
人と人とのつながりが希薄化した現代日本だからこそ、北上川サポート協会のような地域に深くかかわり続ける団体がより大切な存在になってきていると思います。
市民コミュニティに積極的に参加することが、自分の存在価値や生きがいを見つけるチャンスになるかもしれません。
岩手県一関市川崎町。そこには、市民のために活躍する心強いサポーターたちの存在がありました。皆さんも是非、川崎町を訪れてみてはいかがでしょうか。
(取材:我妻遼)
この記事は、岩手と学生を繋ぐ関係人口創出プロジェクト「わたしといわての研究所」のゼミの一環で、学生が制作しております。