栗駒山の麓の街ではじめた人気のアウトドアショップ。
ourthing 山と暮らしの道具店 蘇武 和祥さん栗駒山の麓の街ではじめた人気のアウトドアショップ。
ourthing 山と暮らしの道具店 蘇武 和祥さん宮城県の北西に位置する栗原市。
紅葉の名所で知られる栗駒山をはじめ、ラムサール条約に登録されている伊豆沼・内沼など、自然豊かな地だ。
栗駒山にほど近い商店街、「六日町通り商店街」。
古くから馬の産地・集積地として栄えた城下町であり、 商人の町として今もなお続く、懐かしい昭和レトロの匂いが漂う商店街だ。
昔ながらの商店街に、このところ個性的な店舗が少しずつ増えている。
その中の一つが、「ourthing 山と暮らしの道具店」。
アウトドア用品や生活雑貨を取り扱うお店だ。
開店の時間とほぼ同時に、登山帰りの人や若い男女のグループなど 平日にもかかわらず次々と客が訪れている。
若い男性客が商品を選んでいる様子をみて、「その商品、かっこいいですよね」と 自然にやわらかく話しかけるのは、オーナーの蘇武和祥さん。
初めて登山するという男性客に対して、丁寧に分かりやすく登山グッズの説明をしている。
蘇武さんは、奥様と2人でこのお店を営んでいる。
もともと栗原市の出身で、実家は6代続く兼業農家。
高校卒業後は仙台の専門学校で服飾ビジネスを学び、仙台にあるファッションメーカーやショップで商品企画やグラフィックデザイン、販売などを経験。 販売職は今の接客にも活きているそうだ。
「学生の頃からよくキャンプや山に登っていたりと、もともと登山やアウトドアが好きで。
仕事でもアウトドアブランドショップの販売に携わるうちに、魅力を再発見しましたね。
そうそう、妻と出会ったきっかけも山つながりです。」と微笑む蘇武さん。
同業種で同じく登山好きの奥様と知り合い、のちに結婚。
その後、実家に住む家族のことがきっかけで、栗原へ U ターンすることに。
まだまだ地元に戻る予定ではなかった蘇武さんだが、 自然と地元でお店を開こうと思うようになっていった。
「仕事を通して、様々な人やメーカーと知り合うことが出来ました。
地元にUターンした時、地元の企業に勤めるのも一つの手だったかもしれませんが、それだと、せっかく今までやってきたことが活かされないかなと。
仕事で得た経験や人とのご縁を活かして 自分の好きなことでお店を開きたいと思うようになりました。」
そして、実家の米農家を継ぎながら、「ourthing 山と暮らしの道具店」を 2017 年にオープン。
この六日町商店街にお店を開いた理由を聞くと、普段から山登りをする自分達の感覚と六日町商店街に可能性を感じたことにあった。
「よく地方の山に登った帰りに、麓にある街に立ち寄って カフェやアウトドアショップに行くことが好きなんです。
おそらく、そういう感覚を持つ人は結構多いと思います。
六日町商店街には、古民家を改装したカフェ『かいめんこや』さんが あるので、ここにアウトドアショップがあったらさらに素敵だと思いつきました。」
「ここは栗駒山の近くにある商店街なので、そういった意味でも立地条件が良い。
栗駒山を好きな人が集まる場にできれば、少しでも商店街に賑わいが戻ってくるかもしれない。
その直感を信じて、商店街にお店を開くことを決めました。」
お店では、アウトドア用品だけではなく、暮らしの中での身近な雑貨も取り扱っている。
大事にしていることは、「偏りすぎず、間口を広く」。
「ガチガチのアウトドアショップだと、本当にアウトドアが 好きな人しか来なくなっちゃうので(笑)
偏りすぎないように、という点はこだわりましたね。
様々な年齢層の人が商店街にいるので、アウトドアに 興味がない人にもお店を楽しんでもらいたくて、 暮らし道具も置くようになりました。
地域の雰囲気にも合わせながら、幅広くチョイスしています。」
蘇武さんが子どもの頃の商店街は、週末やお祭りの時はとても賑やかだったそうだ。
だが、細倉鉱山が閉山、2007 年に鉄道が廃止になり、商店街は徐々に活気を失っていった。
この地域に限らず、全国どこの商店街においても起きている現象だ。
そんな中、六日町商店街には、今新しい風が吹いている。
ここ数年で面白い人や新しいお店が増えてきているという。
蘇武さんのように U ターンしてきた人もいれば、 縁もゆかりもなかった人たちがたまたまこの商店街にたどり着いた、ということもある。
六日町商店街には、どうして人が集うのだろう。
「人のご縁が重なる地域だと思っています。 歴史が残る昔ながらの雰囲気と、新しい人の雰囲気が交わって、 良い意味で雑多な商店街になってきたな、という印象です。」
「都会と比べて家賃が安いというハードルの低さや 町や人をつなぐキーマンもいますし、いろいろな面で背中を押してもらえる環境がそろっています。
今後も、若い人がもっと移住してもらえるような、お店を開きやすくなるような商店街にしていけたらいいですね。」
蘇武さんのお話や立ち振る舞いを見ているうちに、ふと気付いたことがありました。
それは、いい意味で「力を抜いている」ということ。
お客さんに対してさりげなく声がけをして、かといって過剰に接客するわけでもなく自然な距離感で接客されている蘇武さん。お客さんにも自然と笑顔がこぼれます。
お店においてある商品も、偏りすぎず、地域にゆるやかに合わせている。
適度に力を抜いた優しい雰囲気が、このお店の魅力にもつながっているのだなと感じました。
これまで六日町商店街にはなかったであろう、アウトドアショップ。
正直なところ、昔ながらの商店街で馴染みのないお店を開業するのは、地域に受け入れづらいのではないかな、と思っていました。
ですが、移住者が集まる六日町商店街という地盤と、蘇武さんの「力を抜いた」スタイルがうまくマッチしてローカルでやりたいことを形にしているように感じました。
大切にしたいところはぶれずに、時には柔軟である姿勢が、地域でやりたいことをカタチにできるヒントなのかも、と感じました。
まだまだやってみたいことがある、と蘇武さんは言います。
「お店というカタチにこだわらず、ゆくゆくはキャンプ場もひらいてみたいですね。 お客さんと一緒にキャンプや山登りにも行ってみたいです。」
まだまだこのエリアは面白くなっていきそうです。
地域でやってみたいことがあるけど、モヤモヤしている方は、ぜひ六日町商店街に、蘇武さんに会いに足を運んでみてください。
自分らしい道を進むヒントが、見つかるかもしれませんよ。
(取材: 足利 文香)
名称 | ourthing 山と暮らしの道具店 |
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住所 | 宮城県栗原市栗駒岩ケ崎六日町95-2 |
電話番号 | 0228-24-8305 |
営業時間 | 11:00-18:00 |
定休日 | 水曜日、第2第4木曜日、不定休(農繁休業) ※新型コロナウィルス感染拡大を受け、営業形態および営業時間が変更されている場合がございます。詳しくは店舗までお尋ねください。 |
駐車場 | 無(詳しくはスタッフまでお問合せください) |
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