やりたいことを素直に。新卒 U ターンでカフェ開業

cafe noix 〔 カフェ ノワ 〕 佐藤 朱里さん

一関の中心地から少し外れた、いわゆる田舎道を車で走っていると、 サファイアブルーの外壁が印象的な四角い建物が現れる。
cafenoix(カフェ ノワ)という、あまり聞き慣れないながらもどこか印象に残る店名。
noix は、フランス語でクルミを意味する。岩手になじみの深い食材だ。

「おはようございます。」やわらかい声で迎え入れてくれたのは、店主の佐藤朱里さん。
一関市出身の佐藤さんは、2019 年にcafe noixをオープン。
関東の大学を卒業してすぐにカフェを開業するという、異例のスピード感だ。
カフェを開こうと思ったきっかけは、大学在学中にまちづくり系の授業を受けたときにあった。

「高校生の頃までは、これといってやりたいことがなかったんです。
大学1年生の時、カフェによる地域の活性化について学ぶ機会があって、 その時からカフェをやってみたいなと思うようになりました。
その後、就職活動の時期になるわけですが、私、就活したくなくて(笑)
だったら、自分でカフェを開けば自分の好きなように仕事ができると思いつき、よし、カフェを開こう!となりました。」

店内から一関市の街や田園風景を一望できる。

カフェを開こうと思いついてからは、地道に準備を進めていった佐藤さん。
大学在学中に飲食店、結婚式場、都市計画に関わるバイトをして、資金調達をしながら接客の経験を積んでいった。
また、居住空間について学ぶ講義を受けて、カフェのインテリアデザインにも活かしている。
着実に自分の糧にする、その計画性と行動力には目を見張るものがある。

「周りが就職活動をしていく中で、自分だけ大丈夫だろうかと焦りや不安もありました。 でも、ここまでなんとか続けられることができたのは、地元でカフェを開いたからだと思います。
地元だったら、なんとかやっていけるんじゃないかという予感がしたから。
都会でカフェを開いていたらうまくいかなかったしょうね。 競争率が激しすぎてつぶれちゃっていたかも(笑)」

大学を卒業してすぐにカフェを立ち上げる。それは覚悟や勇気がいることのはず。
だけど、佐藤さんはシンプルに自分に向いているものを選んでいって、着実に実現していった。

気負いせず、あくまで自然体。
それがお店の雰囲気につながっているのかもしれない。

カフェを開くにあたり、最初は場所探しに苦戦したという。
「古民家をリノベーションしてカフェを開こうと考えていたんですが、意外と不便な点や修繕費がかかることが分かって、さてどうしよう、となりました。
そんな時に、建物の相談をしていた不動産屋のとなりの敷地を 運よく紹介していただけることに。
大学時代に貯めた資金と、融資も受けて、思い切って新しく建てることになりました。」
淡々と喋る佐藤さん。そこにはいくつものご縁や決断がつながっていることを感じさせる。

カフェをオープンする前は、地元にいる若い人達が集える場所にしたいという気持ちがあったそう。
それが、地域のことを知っていくうちに、様々な年代の人が集える場所にしていこうと方向転換。

「高校生までは、地元のことをあまりよく知りませんでしたし、魅力を感じられませんでした。
でも実際に足を運んでみると、素敵なカフェやお店があって、田舎ならではの人のあたたかさを感じるようになっていきました。
地元もまだまだ捨てたものじゃないなと。 だからこそ地元に寄り添ったお店を目指したいと思うようになりましたね。
お店に来てもらった人に、ゆっくり過ごしていってほしいなと思っています。」

カフェをオープンして、今年で2周年になる。
地元のつながりも増えて、様々な年代の方が集う場所になっている。
今後は、新しくチャレンジしてみたいことがある、と佐藤さんは言う。

「2周年という区切りもあって、今カフェのメニューをリニューアルしています。
それと、ここの場所も色々と活用法を見出していきたくて。 手芸教室をやっている人や、お店を開いてみたいという人が周りにいるので、 なにかやってみたい、場所を探している、そういった方々に スペースをお貸ししたいなと思っています。
新しくチャレンジする人の、少しでもお手伝いができたら嬉しいですし、 若い人にも何か刺さるものがあったらいいなぁと思っています。」

自分のやりたいことを実現するために開いたカフェが、他の人のやりたいことを応援する場所になろうとしている。

やりたいこと、やりたくないことに素直に進んでいく佐藤さん。
「2年、続けてこられて良かった」と、安堵の表情を浮かべながら、そうつぶやいた時、これまでの葛藤と、佐藤さんの芯の強さを感じました。

その姿は頼もしく、これから地域に戻ってきたいと思う人を、勇気づけてくれると思います。

 

 

(取材: 足利 文香)

名称 cafe noix
住所 岩手県一関市萩荘字袋田96-5
電話番号 080-9331-8513
営業時間 11:00-16:30(l.o 16:00)
定休日 木曜日・金曜日・不定休 ※新型コロナウィルス感染拡大を受け、営業形態および営業時間が変更されている場合がございます。詳しくは店舗までお尋ねください。
駐車場
席数 15席
予算目安 ¥400~¥1,000
おすすめメニュー スイーツプレート
Instagram https://www.instagram.com/cafe_noix