つくるって楽しい。毎日デザイン日和。

charmig(シャルミグ) 菊池京香さん

JR一ノ関駅西口構内にある「カフェコメスタ」。

今日はこのカフェで、ある女性と待ち合わせをしている

 

店内に入ると、コーヒーのいい香りがふわっと漂う。

「こんにちは!」とにこやかに手を振ってくれたのは、菊池京香さん。

 

菊池さんは、「charmig(シャルミグ)」という屋号で、一関市内を中心に活動しているデザイナーだ。

自宅やカフェなどで作業することが多く、カフェコメスタもよく利用するのだそう。

「屋号のcharmig(シャルミグ)は、スウェーデン語で「魅力的な」という意味なんです。スウェーデンは女性がいきいきと活躍している素敵な国だなと思っていましたし、言葉の語感が良かったことも相まって、この屋号に決めました」

主な業務内容は、チラシや名刺、ロゴ、Webデザインなど、幅広くデザインの依頼を受けている。

カフェコメスタの店内には、一関市の魅力を紹介するポップが飾られており、これらのポップも菊池さんがデザインを担当した。

「どんな依頼にも柔軟に対応することをモットーに、デザインをしています」

もともと一関市出身の菊池さん。

小さい頃から絵を描くのが好きな子どもだった。

 

高校は一関修紅高等学校に進学し、県大会ベスト4に進出するほどの強豪バレー部に所属。

バレー部で地道に練習を続けた経験は、今のデザイナーの仕事にも活きているという。

 

「意外と、デザイナーって体力勝負なんです。月に何件も依頼が重なって、納期に追われることも結構あるんですけど、そういった時こそ『大丈夫!できる!』ってやる気になれるんですよね。バレー部で身に付いた、根性と忍耐力のおかげかなと思います」

高校卒業後はアパレル業界に就職し、東京駅構内のアパレルショップで働いた。

もともとファッションが好きという理由もあったが、それ以上に「地元を出たい」という気持ちが強かった。

 

特にやりがいを持って取り組んでいた業務は、店内に設置するポップづくり。

もともと絵を描くのが好きだったこともあり、率先して取り組んだ。

お客さんに商品を手に取ってもらうために、視線誘導するにはどうすればいいか、あれこれ考えながらポップをつくるのが楽しかったという。

 

「商品やポップをレイアウトしたら、俯瞰してみて、ここが偏っているなーとか、配色がごちゃごちゃしていないかなど、バランスよく配置することを心がけていました」と、当時から無意識にデザインの視点を持っていたようだ。

一方で、東京での暮らしが自分には合わないと感じていた。

 

「東京の水道水が、体質に合わなかったんです。シャンプーをすると髪質も変わっちゃって。

岩手の水って、質が良くて美味しかったんだなって、離れてみて初めて気づきました」

 

その後、一関市にUターン。在宅の仕事を探していたところ、ココナラやランサーズなどのクラウドソーシングサイトを活用したデザインの仕事があることを知った。

時間に制約されずに仕事ができるので、自分に合っているかもと思い、登録してみることに。

とはいえ、デザインは未経験だった菊池さん。

最初の頃は参考書を読んだり、インターネットで検索したりして、デザインの知識を身に付けていった。

そうすると、自然と自分の中に型ができていって、どんどん夢中になった。

 

夜中に作業して、気づいたら朝までずっとパソコンをいじってるそんな生活でしたね。眠くても、デザインの仕事をするのが楽しくて仕方なかったです」

 

当時のことを思い出し、懐かしそうに、目を輝かせながら語る菊池さん。

仕事の依頼が少しずつ増えてきた頃、知り合いから「一関青年会議所に入ってみない?」と誘われた。

青年会議所とは、「明るい豊かな社会の実現」を目的として、社会貢献やまちづくりに寄与する青年団体だ。

一関青年会議所がどんなところなのか、誘われるまで知らなかったという菊池さん。

 

「それに私、もともと人見知りで。知らない人だらけのコミュニティに入るのは、正直怖かったんです(笑)。でも、いろんな人とつながって、仕事の幅が広がるチャンスかもしれないし、まずはやってみようと思って、勇気をふりしぼって入会してみました」

実際に入ってみると、フレンドリーで多種多様な業種の人たちと出会い、さまざまな生き方や価値観を知ることに。

 

いつの間にか初対面の人と話すのも平気になり、自己開示ができるようになった。

今では、事務局長を任されている菊池さん。

事務仕事は苦手だが、前向きにチャレンジしている。

一関青年会議所に入ってから、デザインの仕事を依頼してくれる会社ともつながり、以前に比べて一関でのデザインの仕事が増えた。

クラウドソーシング系の仕事と並行して、一関で開催するイベントのチラシや、個人店の看板のデザインなど、幅広く対応している。

以前依頼を受けたクライアントがリピーターになり、定期的に依頼をもらうこともあるのだそう。

「変わらず求めていただけて、ありがたいの一言につきます」と話す菊池さん

クライアントが希望しているデザインや、大事にしたいイメージを認識合わせするために、ヒアリングを重ねることを心がけている菊池さん。

クラウドソーシング系の仕事の場合、文面でのやり取りが中心だが、さらに要望を深堀りしたいときは、対面に近いテレビ電話でヒアリングをすることもあるのだそう。

 

「ヒアリングをする上で、お客様の要望に受け身で聞くだけでなく、こちらの意見も積極的にお伝えするよう心がけています。デザインを一方的に押し付けるのではなく、あくまで提案にとどめるようにしています」

 

「最終的には、お客さまのニーズにしっかり応えることが大切だと思っていて。そのバランスは難しいのですが、お客さまに合わせて、踏み込む度合いを変えるようにしています。より良いデザインを提案するためにも、ヒアリングは一番大切にしていることですね」

デザインの仕事と一関青年会議所の業務に取り組む菊池さん。

その傍ら、従業員を2人雇い、ノウハウを伝えながら、少しずつ仕事を任せている。

どちらも菊池さんと同じく、デザイナーを志し、いずれは独立したいという思いを持っており、菊池さんはその思いを聞き入れ、雇うことを決めたという。

 

経営者であり、デザイナー。

一関青年会議所の事務局長と忙しい日々。

それでも、デザインが楽しくて、これからも続けていきたいという菊池さん。

「仕事が増えれば増えるほど、俄然やる気になるタイプです。自分の中で限界を決めたくなくて、負けず嫌いなので、基本的にどんなデザインの仕事も受けるようにしています」

「乗り越えたあとの達成感で飲むビールが、一番美味しいんですよ」

今後は、アパレル会社での経験を活かし、服飾ブランドを立ち上げたいと語る菊池さん。

もともと、さりげないデザインが目を引くシンプルな服が好きで、自分が身につけたいものを形にしてみたいという思いがあったという。

デザインの仕事で行き詰まった時や、息抜きしたい時に、ブランドのデザイン構想を練っている。

「仕事でも、そうでないときも、気づけばデザインのことばかり考えちゃうんです」と、はにかむ菊池さん。

デザインが楽しい。その気持ちが、きっと彼女の原動力だ。

今日もまた、心を踊らせながら、パソコンの前で「つくる」を楽しんでいるに違いない。

 

(取材:足利 文香)

名称 charmig  -シャルミグー
設立 2020年7月
代表 菊池 京香
住所 〒021‐0902 岩手県一関市萩荘字白山田24プルーデンスⅠ302
電話番号 080-9628-0308
営業時間 平日9:00~18:00/土・日・祝日休 ※ご連絡は24時間のご対応が可能です。
事業内容 【DTPデザイン・制作】名刺、チラシ、カタログ、パンフレット、リーフレット等                                       【GFXデザイン・制作】ロゴ、看板、イラスト等(市内-看板取付可能)                                【WEBデザイン・制作】