築140年、古民家から能登発信
水上志都さん(古民家宿「奥能登じろんどん」女将)築140年、古民家から能登発信
水上志都さん(古民家宿「奥能登じろんどん」女将)のどかな里海が目の前に広がる能登町の小さな集落で、築約140年の古民家を改装し、宿のオープンに向けて汗をかく移住者がいる。それが水上志都さん(53)=茨城県出身=だ。能登町へ移住したのは2015年。前職は東京のIT企業でプロダクトマネージャー。2010年にキャリアデザイン大賞を受賞するなどキャリアを積んでいったが「会社も仕事も好きだったけど 、ITの技術がどんどん進化していく中で、自分自身がこの先ずっと追いついていけるかわからなくなったんです」と話す。当時は東京に住んでいたが、転職を考える中で「仕事をするために東京に住んでいるんだから、仕事が東京じゃなくなるなら、東京以外に住んでみてもいいのかも」と移住をすることも良いのではと思うようになった。【この記事は金沢日和が制作しました】
実は幼少期を富山県で過ごした水上さん。雪深いけれど夏の暑さや季節を感じ、新鮮な魚や米が美味しかった思い出のある北陸への移住を真っ先に考えたという。小さい時に能登にも訪れたことがあったが、その時は道路が整備されておらず、遠いばかりであまり楽しかった思い出がなかったそう。しかし、移住を念頭において能登を訪ねたときに、その自然豊かな景色や食に魅了された。
水上さんは移住後、様々な仕事を掛け持ちで行ってきた。食材流通会社に2年ほど勤め、現在は個人で食材卸の仕事をしている。加えてNPOや事業協同組合の事務局、移住支援の事務局などを勤めた。そして、2023年夏に新たに宿泊施設『奥能登じろんどん』をオープンさせた。
水上さんが移住支援の仕事として、移住希望者へ紹介する物件情報を集める中でとある物件と出会う。買い手がつかず、家主が「管理も大変なので、誰も使わないなら壊そうと思っている」と言っていると聞き、「こんな立派な建物を壊しちゃうのはもったいない!それならここで事業をしよう!」と、ロケーションを活かした古民家宿へ乗り出した。なお、宿名のじろんどんの由来は元々家主の屋号「次郎右衛門(じろうえもん)」が訛り、じろんどんと呼ばれたことからとった。
「風が通るのが気持ちよく、静かなところも気に入って」。2世帯、3世帯の家族で来て、ゆっくりと過ごしてそれぞれが楽しめるような時間と場所を提供したいと言う。宿は1棟貸の素泊まりで、米と野菜は無料でつくそうだ。それ以外は食材を持ち込み調理したり、ケータリングやシェフの出張サービスを利用することになる。外土間でBBQも可能だ。水上さん自身が食材流通の仕事もしているため、地元業者や加工会社の旬のものを提供したいと言う。
1人~8名まで宿泊可能で料金は7万5000円。(12歳以上は使用料として5,000円/1人追加)。ゆっくりと過ごす時間をより楽しいものにと、心と体のリラクゼーションプログラムとして、心の動きを書にしたためる抒情書家体験、鍼灸師によるボディメンテナンス、 そして国際中医薬膳師による薬膳者ワークショップなどを提供する。
以前、東京で仕事をしていたときより、能登では収入がガクンと下がる。それでも掛け持ちで仕事ができる場所。「自分が暮らせるだけの収入をどう得るのかだけの問題。マルチワーカーや、私みたいにいろんな仕事を掛け持ちして自分でいろんなことをしながら好きなことを仕事にしていく生き方や暮らし方が向いているんだと思う」
能登に暮らしたいから仕事をする。『奥能登じろんどん』は、地域や人とのつながりを生み、ゆったりとした時間の流れを楽しむ場所。是非この宿や場所の魅力を体験し、特別な時間を過ごしてみてはいかがだろうか。
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