暮らしのイメージ描く

すず里山里海移住フロント(珠洲市)

能登半島最北端の珠洲市。金沢からバスで3時間かかるさいはての地で、人口は1.3万人と本州最小の市だ。だが、最近珠洲市は移住者が増えているという。お世辞にも便利には見えない町が、これほど人気になった理由はなぜだろうか。珠洲市の移住相談窓口を訪ねてみた。

伝統と新しさが魅力

珠洲市の移住相談窓口となる「すず里山里海移住フロント」は市役所の中だ。戸籍や納税などよく訪れる部署を横目にエレベーターで4階に上がる。いかにも中枢という雰囲気の静かな廊下を進み、指定された企画財政課の部屋に入った。

「お待ちしていました、私も移住してきてここで働いているんです」
緊張する私たちを気さくに出迎えてくれたのは地域おこし協力隊として昨年12月から市内で暮らす森田貴志さん(32)だ。名刺交換もそこそこに、さっそく珠洲市の魅力を聞いてみることにした。

「そうですね、『なつかしくて新しいまちであるところ』にひかれる人が多い気がします」

黒瓦の町並みや、揚げ浜式製塩、集落ごとの秋祭りなどの昔ながらの暮らしが受け継がれている。
一方で伝統を守りながら、新しいものを受け入れる穏やかな気質も特徴だ。「まち全体にまだ余白がある、といえば伝わるでしょうか」と森田さん。
その象徴とも呼べるのが2017、21年に開催された奥能登国際芸術祭だ。市内の古民家や田園風景が最先端の現代アートの会場となり、全国から注目されたのである。森田さんも芸術祭が移住のきっかけになったという。

 

イメージを深める

移住を考えるきっかけは人それぞれ。移住フロントには年間180件程度の移住相談がある。相談を受けたらまずやるのは「よく観察すること」だという。この人は「なぜ移住したいのだろう?」「何を望んでいるのだろう?」はたまた、「どんな人生にしたいのだろうか。」など話を聞きながら相手の想いをくみとる。電話やメールで始まった相談も、できるだけオンライン面談や現地見学を通じてイメージを深めてもらうことを心がけている。

「なにが心配なのか、移住の決め手になるような情報はなにか、しっかりと話し合うのを大事にしています」

移住前から暮らしを正確に想像している人は多くないし、まだ他の自治体と決めかねている場合も多い。もしかしたら思うような生活や事業ができない場合もある。移住希望者と向き合うときは、考えを深めるための問いかけを欠かさないようにしている。

最後に、珠洲への移住が向いているのはどんな人か、森田さんに聞いてみた。

「どなたでも大歓迎です、来てからの目標があるとスムーズに進みますね」
森田さんも、今では周囲の人に助けられて充実した毎日を送っているという。

「市では賃貸住宅に住む場合の家賃補助制度や、空き家を購入・改修する場合の補助金制度(子育て世代は最大150万円!)などがありますのでご相談ください」

就職も移住も、相互の理解があってこそ。
奥能登への就職が決まった際は、ぜひ珠洲市の移住フロントを訪ねてみてはいかが。

(情報は2023年6月現在のものです。最新の情報は移住フロントが運営するウェブマガジン「すっとずっと」などをご覧ください)

名称 すず里山里海移住フロント(事務局:珠洲市企画財政課移住定住推進係)
所在地 珠洲市役所内(珠洲市上戸町北方1ー6ー2)
連絡先 0768-82-7726