駅前通りで移住者迎える

活動交流拠点NOTO CROSS PORT(ノトクロスポート)(能登町宇出津)

能登町宇出津(うしつ)の中心市街地。かつての駅前通りの角に、ガラス張りのオフィスを見つけた。おしゃれなデザイン事務所だろうか。思わず覗き込んでみると中から親切そうな男性が現れた。「デザイン?ここは移住支援も行っている町の交流拠点ですよ」少し意外な言葉が返ってきた。

1つの町、たくさんの国

施設の名前は「ノトクロスポート」。2021年に新装開店した町の新しい移住相談窓口だ。町の窓口は2017年に設置され能登地方では最後発だったが、このクロスポートのオープンを機に移住施策は大きく前進した。
ここで移住者とのファーストコンタクトを担当するのが能登町定住促進協議会の森進之介さん(42)だ。大手求人会社勤務などを経て、自らも2016年に金沢から移住した。開所時間が平日に限られる町役場を、民間出身で身軽な森さんがフォローしながら移住施策をすすめている。

 2005年に3町村が合併した現在の能登町。海沿いの漁師町から、中山間地の農村までさまざまな地域が混在している。

「町内には約190の集落があり、まるで別の国のように違います。ミスマッチを起こさないよう調整が大事なんです」

森さんが担当になったばかりの頃は、集落ごとの違いがわからず移住後のトラブルに悩まされた。よそ者に否定的な集落はないものの、住民の暮らしぶりや習慣はそれぞれ異なる。そして、やって来る人の職業や性格によって相性が生まれる。森さんはすべての集落を巡り、地道に聞き込みを行ってそれぞれの特徴をたたきこんだ。

不安なのは住民だけではない。移住者からは「ゴミ袋に名前を書いたほうが良いのか?」「おすそ分けのお礼はどうしたらいいのか」など、改めて聞きづらい質問も寄せられるようになったという。地方移住は「定住が難しい」と言われるなか、能登町では移住3年後も9割以上の人が住み続けている。

「集落ごとに採用担当をしている気分です。引っ越しは何度もできるものではないので、最初から慎重にやらないとだめなんです」森さんは笑顔で話した。

偶然が生まれる場所

ノトクロスポートは移住相談のほか、地域の人たちの交流の場所としても活用されている。もともと家具店だったという広い空間にはシェアオフィスや円卓、大きなモニターを設置し、地元高校生の勉強会なども開催されている。

「移住や起業したひとがふらっと現れて、悩む人の相談に応じるような偶然が生まれています」

今では森さんだけでなく、地域の企業、団体の力も借りながら、うれしい偶然を生み出すため、工夫をこらしている最中だ。
多くの人が集まる港のような場所。旧駅前通りという立地も相まって、まさに新たな町の玄関口だと感心した。

名称 活動交流拠点NOTO CROSS PORT(ノトクロスポート)
所在地 能登町宇出津タ75-3
営業時間 午前10時〜午後4時(第2.4土曜は午後1〜4時)
定休日 土、日曜(第2.4土曜除く)
電話番号 0768-62-0260
ウェブサイト https://notocrossport.com/