サクラ満開の日に歩く

地元の人しかいない!?リアル金沢花見スポット3選

2023年3月31日、金沢地方気象台がサクラの満開を宣言した。
在宅勤務がすっかり板についていたところだが、晴れ渡った空と春の陽気に誘われ思わず家を飛び出した。
きょうは花見をしなければ後悔すると思ったのだ。さて、石川県のサクラの名所といえばまっさきに浮かぶのは兼六園や金沢城だろう。車を走らせて石川門までたどり着いたが遅かった。既に黒山の人だかりだ。新型コロナウイルス収束の気配もあって喜ばしいが、さすがにこの混雑ではゆっくり花見は難しい。名園も惜しいが、きょうはなるべく地元の人しかいない花見スポットを巡ろうと心が決まった。金沢に住む私にとって、見たいのは観光地ではなくサクラそのものなのだ。

 

卯辰山公園

 

兼六園を通り過ぎて、城下町の裏山、卯辰山(うたつやま)を目指すことにした。浅野川の北岸、ひがし茶屋街の裏手から金沢大学角間キャンパスの付近まで続くなだらかな山地は、広大な公園が整備されている。

 

望湖台

河北潟が見渡せることから名付けられた望湖台(ぼうこだい)の入り口には懐かしいリンゴ飴やベビーカステラの屋台が出ていた。駐車スペースも公園内にたくさんあり、お手洗いも完備されている。卯辰山の特徴といえばなんといっても抜群の眺望だ。金沢城の中まではっきり見えてしまうので、江戸時代には立ち入りが禁じられていたほどである。霞む金沢と日本海はなんとも春らしい。寒くて歩きづらい雪の季節も、いまでは悪い夢だった気がしてくる。

四百年の森

望湖台からさらに卯辰山を分け入ると、公園内では比較的新しい1982年に整備された谷あいのエリアに行き着いた。前田利家公入城400年の節目を祝う四百年の森である。花で埋まる渓谷はまさに夢のような景色。やはり名所なのか地元テレビ局の撮影チームと出くわした。

もりの里(旭橋付近)

 

卯辰山のふもとに下りて、少し浅野川をさかのぼると「もりの里」に行き着く。ここは2004(平成16)年に、金沢市の東側をバイパスする山側環状線開通とともに開かれた若い街だ。金沢大学角間キャンパスも近く、学生街として発展が続いている。同じ浅野川沿いなら、ひがし茶屋街横の河原は絵葉書にもなるような花見の名所だが、もりの里は大学生がのんびりとバーベキューを楽しむのどかな河川敷だ。

川に沿って花が咲き誇る。樹の下は遊歩道になっている。奥に見えるのは金沢のB級グルメとしても有名な「第7ギョーザの店」。木の密度が高いため、まるで壁のような迫力がある。大学のサークルか研究室のメンバーだろうか。今年は開花が早かったが、新入生の歓迎会にも花見は定番。どうにか花が残っていてほしい。

 

金沢市営陸上競技場

 

のんびりしていたらすっかり夕方になってしまった。浅野川から車で20分ほど。こちらも花見客で大賑わいの犀川を越えると運動公園がある。今でこそこじんまりとした印象をうけるが、この地は戦後間もない1947(昭和22)年に第2回国民体育大会が行われた華々しい場所なのである。戦前からあるという陸上競技場のまわりには約100本のサクラが植えられており、観客席はピンク一色となる。

入り口はよくあるスポーツ施設。花見をするといってここに連れてこられたら驚くこと間違いなし。トラックでは地元の小中学生がハードルの練習に励んでいた。厳しい指示を飛ばす監督らしき人の横をすり抜けて奥へ進む。トラックの横はまさに花盛り。お弁当を広げている人もいて、なんだか運動会に来たような気分だ。トラックの横の芝地には巨木が2本。ここが一番人気だった。

 

午後からの思いつきだったが、金沢の桜を満喫できた。感染症の収束によって観光客が激増したが、まだまだ静かに桜を見られるところはたくさん残されている。今回紹介した場所があまり有名にならないでほしいと思う一方で、多くの人が楽しそうに過ごしているのも捨てがたい春の風物詩だ。南北に長い石川県、金沢で見頃が過ぎた後は能登がピークを迎えることになる。来年は早起きをして、能登にも足を伸ばしたいと思った。