百万石ゲートウェイ

金沢駅

 

線路は斜め45度

 

石川県を訪れる人の玄関口になる金沢駅。2015年3月に北陸新幹線が延伸開業して以降、その役割はますます大きくなった。

金沢駅を通る新幹線や在来線は北東から南西方向へ斜め45度の角度で線路が敷かれている。線路の向きゆえに若干わかりづらいが、金沢駅は一般に東西に出入り口があると説明されることが多い。以前は東口、西口であったが、新幹線開業を期に、中心市街地に向いている東口が兼六園口、県庁や海のほうを向いた西口が金沢港口と名付けられた。

金沢駅は1898(明治31)年、西から建設が進められた北陸本線の駅として開業した。現在の北陸新幹線が東京方面から建設されているのに対して、北陸本線は岐阜県の米原から琵琶湖東岸を北上して北陸を目指していた。駅の立地は既に密集していた中心市街地を避けるようにして、町外れだった現在地の木ノ新保町(きのしんぼまち)が選ばれた。不思議な地名だが「新保」とは一般に江戸時代初期ごろに開かれた新たな村や農地のことであり、城下町が形成され始めた時点ではなにもない土地だったのだろう。

兼六園口から都市軸となる百万石通り(国道159号・旧8号)までは約1キロほど離れている。近江町市場までは新宿駅から東京都庁までの距離と変わらないが、地元の人はバスの利用が多い。新幹線開業後、観光客の多くが徒歩で向かうようになったため「都会の人はよく歩く」と地元新聞で報じられたこともある。もちろん現代では町外れという気配はなく、駅前の繁華街も住民の憩いの場となっている。

 

おもてなしの大屋根

 

金沢駅といえば、駅前の大きなガラス屋根と、木造の門型のモニュメント「鼓門」が有名だ。ガラスの大屋根は「もてなしドーム」と呼ばれており、雨雪の多い金沢の気候にあって、来訪者に傘を差し伸べるようなおもてなしの心を表している。青空がのぞく透明感あふれる建築だが、積雪180センチの重みに耐えられる設計がなされている。これは今まで金沢で記録された積雪最深記録を考慮したものだ。鼓門は金沢で盛んな能楽でも演奏される鼓(つづみ)がモチーフとなっており、観光客の記念撮影スポットとして人だかりが途絶えることがない。金沢駅の象徴的な風景は2011年にアメリカの旅行雑誌「トラベル・アンド・レジャー」ウェブ版にて「世界で最も美しい14駅」に選ばれ、世界的にも評価が高まっている。

駅前ばかりが注目されがちだが、駅舎内も石川の魅力があふれている。東西をつなぐコンコースの柱には輪島塗や九谷焼、山中漆器など県内各地の工芸品が彩りを添えており、みどりの窓口前にある大樋焼(おおひやき)の陶壁も必見だ。観光客にとっては目的地にふさわしい駅であるが、移住する人にとっては誇らしい出発駅となる。転職活動の合間には駅前を散策して、街の熱気を感じてみてはどうだろうか。

(写真提供)金沢市

名称 金沢駅
所在地 金沢市木ノ新保町1番1号
アクセス JR北陸新幹線、JR北陸本線(福井方面、2024年まで)、IRいしかわ鉄道(富山方面)、北陸鉄道浅野川線(内灘方面)、高速バス(東京、大阪、京都、名古屋、富山ほか全国各地)、特急バス(能登方面)、小松空港リムジンバス、ほか金沢市内各方面への路線バスあり。