金沢文芸館(金沢市)

 

直木賞は金沢から

 

金沢文芸館はひがし茶屋街や近江町市場からもほど近い橋場町交差点に面している。

建物は1929(昭和4)年に銀行として建てられ、2000(平成12)年まで現役で使われていたモダニズム建築だ。

2階には、金沢在住時に作家デビューした小説家五木寛之氏の貴重な資料を展示している金沢五木寛之文庫が設けられている。

五木氏は1965(昭和40)年から4年間、金沢市小立野、石引などで暮らした。妻の玲子さんは金沢出身である。66年に33歳の若さで作家デビューし、1967年に「蒼ざめた馬を見よ」で直木賞を受賞した。その後は横浜へ転居してしまうが、主計町茶屋街にある無名の坂道を「あかり坂」と命名するなど金沢との縁は深い。

 

代表作がズラリ

 

五木寛之文庫に踏み込むと、正面には「青春の門」シリーズなどの代表作が壁いっぱいの本棚にズラリと並べられている。現在は東欧やソ連を旅したときの写真が多数飾られており、プラハの広場で現地の人と腕相撲に興じるチャーミングな1枚にはほっこりさせられる。充実した展示で思わず目を引くのは、五木氏が執筆に使うために改造したボールペンのレプリカだ。普通のペンでは指痛みや吐き気などに悩まされたため、ペン軸にゴルフクラブ用の滑り止めテープを幾重にも巻き付けてふくらみをもたせ、握りやすいかたちに変えている。黒い飛行船のような異様な見た目に苦労が伝わってくる。展示は定期的に入れ替えがあり、さまざまな側面から五木作品に理解を深めることができるだろう。

3階は金沢市が主催する泉鏡花文学賞の展示コーナーが設けられている。鏡花の生誕100年を記念して1973(昭和48年)に創設された文学賞は、2022年に50回を数え、ベテランはもちろん、新人作家の登竜門の役割を担っている。

名称 金沢文芸館
所在地 金沢市尾張町1丁目7番10号
開館時間 午前10時〜午後6時(入館は午後5時半まで)
休館日 火曜日(祝日の場合は翌平日)、年末年始(12月29日〜1月3日)、展示替え期間
観覧料金 100円(高校生以下無料)