3世代で暮らす、家族のかたち

向川邸

「同居」と聞くとネガティブなイメージをもつ方も少なくないはず。
一方で、現在の同居という暮らし方、そして多世帯住宅という住まいについて、ポジティブな面に目を向けたことがある方も少なくないのではないだろうか。

今回取材に協力してくれた向川家は、坂井市春江町の大きな一軒家で3世代が暮らす。
恵さんの実家に誠さんが婿入りする形で、約1年半前から2世代での生活が始まった。
また、今年5月には第一子を出産。子どもを育てながら夫婦ともに働き続ける生活について、詳しく聞いてみた。

家について

広々とした庭も特徴的な日本家屋は、恵さんのお祖母さんが建てたお家とのこと。
現在は、恵さんのご両親、恵さん夫婦とお子さんの3世代で暮らしている。
リビングとダイニング、キッチンが主な共用部で、家族みんなが集う場所だ。
お風呂やトイレ、客間の座敷は家族みんなで利用しているが、それ以外の生活スペースは分けられている。

1階に主な共用部とご両親のお部屋、書斎があり、2階に恵さんと誠さんの仕事部屋や寝室などがある。

二人の生活/仕事について

恵さんと誠さんは二人ともフルリモート勤務。それぞれ2階の仕事部屋で作業を行っている。
恵さんは「北陸の空株式会社」というドローン事業や地域活性化事業を行う会社で、バックオフィス業務を担当。
誠さんは、コールセンターを主軸とするIT関連企業の経営企画部門で働いている。
なんと、誠さんは現在働く会社の中で、地方在住フルリモートで働く正社員の第一例目なのだそうだ。
そもそもこういう働き方を望んで今の職業を選んだこともあり、会社に直談判しに行き、同じ会社に属したまま福井へ帰ってこれたそう。

子育てをしながら二人ともどのように通常業務を行っているのか、詳しく聞いてみた。

まず、日中は恵さんが子守をし、誠さんの就業後17〜18時頃に子守を誠さんへバトンタッチ。
夕方は3人一緒に散歩に出かけることもあるそう。
恵さんは夜に打合せなどをこなす。平日のお昼ご飯は休日に作り置きしたものを食べる。
平日の夜ご飯やその他の家事などは、基本的にご両親に任せているとのことだ。

この暮らしで良かったこと

「大人が4人いるから、誰か一人に休みをとってもらったりとか、育児の負担がとても分散されています。親も孫だから可愛がってみてくれるし。私も自分の両親だから頼みやすいし、分散されるのはすごくありがたい」と恵さんは語る。

また、誠さんは「付き合っていた当初から『福井に住みつつ、都会の仕事ができたら理想だね』と言っていました。なので、二人とも家で仕事をして、生活してっていう今のスタイルは、描いてた理想ですね」と話す。

 

逆に、難しかったこと

「私が両親の言動にイライラすることがよくありました。でも、子どもが生まれてそれじゃよくないと思って。生まれて二週間後くらいに、両親と一回話し合いをしました。これまでは大人だけだったから、怒っても無視して自分の部屋に行けばよかったけど、それじゃだめだと話し合いを経てから、お互い協力的になれました」と話す恵さん。

実際の親子だからこそ難しくなってしまうコミュニケーションも、お互い歩み寄って対話をすることで乗り越えていると言う。
頼る先が家庭内にもたくさんあることがこの暮らしのスタイルの利点。
だからこそ、こういった歩み寄りの姿勢が大切なのだろう。

「これだけ生活や仕事の空間を分けられる家は、なかなか都会では建てられないと思います。たくさん頼れる大人が身近にいることも、この家での暮らしの魅力」と、恵さんは語る。

福井ならではの土地や家の広さ、人との繋がりを活かした住まいのあり方も、とても魅力的なものだ。