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人との縁を大切にし、幸せをつなぐ。誰もが輝ける街づくりを

株式会社ENISHIA / 営業orまちづくりコーディネーター

インタビュー記事

更新日 : 2022年07月19日

一人一人との"縁(えにし)"を大切にし、皆様の"幸せ"をつなぎたい――そんな想いを社名に込めて、2020年4月にエニシアを設立。代表の濱田かおりさんは、女性らしいきめ細やかなサービスを強みに、お客様に寄り添いながら住まいに関わるあらゆる相談に乗り、誰もが魅力に感じられる街づくりを推進する。そんな女性経営者の生き方、会社や人材、地域に対する想いを伺いました。

株式会社ENISHIA 事業概要

長年培ってきた不動産営業に携わってきた濱田かおりさんが、2020年4月設立した地域密着型の不動産会社。明石を中心に兵庫県においてアパート・マンション・一戸建て、店舗、オフィス、ビル、倉庫、土地など賃貸・売買物件を幅広く扱う。

 

不動産会社の常識にとらわれない、明るく開放的な店舗

 

JR・山陽電車の明石駅から徒歩5分のところにあるエニシアは、一面ガラス張りの可愛らしい店舗。不動産物件の貼り紙はなく、一見、「何屋さん?」と思ってしまう。店内を覗いてみると、お花やおしゃれなインテリアが配されたオフィスで女性スタッフがテキパキと働く。その一人、代表の濱田さんがにこやかな表情で出迎えてくれた。

「業界の堅いイメージを払拭したくて、あえて何屋さんなのかわからない社名にしました。私も社員も全員が女性。女性らしさを演出することで、お店に入りやすい雰囲気をつくりたかったんです」

優しく包み込むような笑顔で語る濱田さんは、頼りになるお姉さんのよう。不動産会社は敷居が高いイメージがあったが、いい意味で裏切られた。そんな魅力溢れる女性経営者に、これまでの経歴から独立までの話をじっくりと聞いてみた。

 

不動産業界に初挑戦。女性の視点と気遣いを強みに

 

濱田さんは兵庫県姫路市生まれ。卒業後、新幹線でワゴン販売や車掌業務を行うパーサーとして活躍して結婚、出産。シングルマザーとなり、明石市のモバイルショップで働くなか、不動産事業立ち上げをきっかけに一般のお客様に住まいを提案する営業に挑戦した。

「姫路に住んでいたので明石の土地勘はなく、アパートやマンション、戸建ての物件を巡り、写真撮影をしながら地名や道を覚えました」

当初、悩んだのはお客様との距離の取り方。不動産を提案するには、年収などの個人情報を知る必要があるものの、初対面ではなかなか話してもらえない。会話を重ねて共通点を見つけては距離を縮め、お客様の引き出しを開くことを心がけた。

お客様は単身から新婚、ファミリーなど幅広く、住まいに関する要望もそれぞれに異なるが、最終決定権を持つのは大半が女性。同姓であることが強みになった。

「例えば、男性が奥様に『今日もきれいですね』と言うと敬遠されてしまいますが、同性の私が『センスがいいですね。そのバッグはどこで購入されたのですか』と聞くと会話が広がります。また、女性の視点で使いやすいキッチンを提案したり、いろんな相談にも乗りました」

お客様の希望条件に合った物件はもちろん、当初とはまったく違う条件の物件を提案して決めてもらったときは、特にやりがいを感じたそうだ。

「お客様にヒアリングするだけでなく、なぜ駅チカに住みたいのか? なぜこの予算? この間取り?と紐解くことで、本質的ニーズを満たすよりよい提案ができます」

3年間、賃貸物件の仲介営業を続けてきた濱田さんは、売買物件にも挑戦して仕事の幅を広げたいと思い、宅建取得後にキャリアアップを目的に転職をした。

 

 

9億円超の売買を成立。優秀営業として全国表彰される

 

転職先の不動産会社では、個人や法人を対象に戸建てからオフィス、商業施設などの売買仲介を中心に扱った。売買といっても新築、中古、競売、相続に関する物件など多種多様。それぞれに覚えることが多く、不動産の法律は随時改正される。ひたすら勉強の毎日だった。

「常に学びがあり、1つとして同じことがないから面白い。飽き性の自分には合っていたんでしょうね(笑)」

売買になると金額が大きくなり、小さなトラブルも生じた。そんなときは、なぜそうなったのかを振り返り、同じ失敗は繰り返さない。経験を積んで全体の仕事の流れがわかると事前準備に時間をかけ、お客様の質問にも即答できるように。資金面に不安のあるお客様には、FP(ファイナンシャルプランナー)を同席させてライフプランを提案し、安心して購入できるように気配りをした。特に意識したのは、常にお客様とつながっていることだ。

「1度の取引で終わりではなく、紹介やリピートを増やす努力をしました。不動産会社が賃貸と売買の両方を扱っていることを知らないお客様が多いのでアナウンスをしたり、何かあったときに思い出していただけるよう定期的に接点を持ちました」

頭角を現した濱田さんは明石店の店長に就任。その後、近隣に垂水店を出店する際には、その立ち上げを任されて2店を統括するマネージャーを任された。

「数字はもちろんですが、私は挑戦したタイプ。お客様を待つだけでなく、新しい不動産情報サイトの活用など、積極的に提案したことが評価につながったと思います」

なかでも代表的な実績といえば、伊丹空港近くのマンション用地の売買を成立させたこと。9億4000万円は過去最高の取引額だった。

「弁護士さんから相談を受けてお手伝いしましたが、立ち退きや相続といった多くの問題があり、成約までに1年かかりました。難易度は高かったですが、一つひとつクリアすることでスキルアップができましたね」

当時、勤務していた不動産会社はセンチュリー21の加盟店。全国900店舗以上の営業の中から優秀営業として初めて表彰を受け、栄誉ある舞台に登壇した。女性が大きな実績を上げたことで注目を浴び、自信を深めていった。

しかし、途中で逃げたいと思ったことはなかったのだろうか。

「不動産売買でぶつかる壁は似ているので、経験を積むほど対処スキルが身につきます。また、競売物件などの難しい問題は弁護士さんなどの専門家と連携。心強い味方がたくさんいます」

また、シングルマザーの濱田さんは、フレックスタイム制をフル活用。子どもが小さいころは、「数字を落とさないので土日のいずれかは休みにしてほしい」と会社にお願いした。子育てに理解があり、柔軟に対応してくれた社長には今も感謝しているそうだ。

 

「濱田かおり」で勝負をしたいと思い、起業を決心する

 

そんな順風満帆の仕事人生を歩んできた濱田さんは、なぜ起業を考えたのだろうか。

「JC(青年会議所)に入会したことがきっかけのひとつです。様々な業界で起業をしている人たちは、キラキラと輝いている一方で、私は定年までの明確なビジョンが見いだせない。管理職になり、数字の管理や書類のチェックが増えていきましたが、私はお客様と接する現場が好き。小さくても自分の店舗を持ちたい。会社のネームバリューではなく、濱田かおりで勝負をしたいと思いました」

40歳で独立を決意し、2000年2月に退職。同年4月7日に店舗をオープンした。不動産会社がひしめくなか、他社と同じことをやっても負けてしまう。濱田さんは、女性らしいきめ細かなサービスや提案にこだわり、お客様のニーズを深く掘り起こしていった。

「まずは、立地や予算、間取りなどの希望条件をすべて出してもらい、その条件にこだわる理由を聞きながら優先順位を決めます。家族の意見が異なった場合、ここは奥さん、これは旦那さんの意見を尊重しましょうと交通整理をすると、みなさん納得ができるんです」

じっくりと時間をかけ、何度も検討を重ねて決めているので満足度は高く、キャンセルはほとんどないそうだ。

 

 

一人ひとりとの縁を大切にし、お客様の人生に深く関わる

 

社名の由来でもある人との縁(えにし)を大切にし、最後まで責任を持ってフォローすることも特徴のひとつだ。

「一般的に不動産会社は、ポータルサイトで集客を図り、成約見込みの高さでお客様を線引きし、効率的に営業をする傾向があります。けれども当社のような小さな会社は、お客様の数が少ないので希望に合った物件が見つかるまで根気よく提案し続けます」

実際に、半年一年とフォローを続けて希望の物件を見つけ、「この物件を紹介してくれたのは、エニシアさんだけです」と契約に至ったケースもあるそうだ。

同社は紹介・リピートが大半で、1つの縁を5、10に広げている。例えば、自宅を処分したいお客様と初めて取引をしたのち、お店を出すための物件を仲介し、そのお店のお客様を紹介されたことも。人と人とをつなげることが喜びと語る濱田さんに、不動産業界の魅力について聞いてみた。

「就職や結婚といった人生の節目に立ち会い、ずっと寄り添っていける仕事。どんな境遇のお客様もエニシアにお願いしてよかったと思っていただきたいですね」

 

若い世代が明石に帰ってきたくなる魅力ある街づくりを

 

視野を広げて明石市の特徴や課題、街づくりについても伺ってみた。

「明石市は、神戸・大阪エリアと姫路エリアの中間地点。JRと山陽電車の2ウエイアクセスがあり、通勤や買い物にも便利な場所です。海や山が近くて食べ物もおいしい。都会過ぎずに田舎過ぎない、住みやすい街です。行政では子育て支援に力を入れ、子どもの医療費無料化、第2子以降の保育料の完全無料化、中学校の給食費無料など数々の施策を実施し、転入者の増加につながっています」

子育て世代のマイホーム購入、さらに昭和50年代に開発された団地や住宅の住み替え需要が高く、常に不動産が動いているエリア。コロナ過の影響は少なく、将来も有望な地域として注目されている。一方、近隣の若者をはじめ、進学や就職で市外に転出した人たちが帰ってきたくなる魅力ある街づくりが課題だという。

「明石駅の乗降客は1日約10万人いますが、乗り継ぎだけという人が大半です。駅周辺には不動産会社よりもパン屋さんやレストラン、カフェなどいろんなお店が建ち並ぶような街づくりを進め、若い人たちを集客したいですね」

出歩くことが好きな濱田さんは、他エリアの街並みを参考にしたり、話題の店があると「明石に出店しませんか」と提案することもあるそうだ。

 

人生全般をサポートする地域に必要とされる存在に

 

エニシアは、この4月に1名を新規採用して3名体制になった。今までは紹介・リピートのお客様が中心だったが、これからは新規営業を進めていきたいという。

「日本人は親の死の話題を避ける傾向にあります。そのきっかけをつくるためにコンサルの先生と連携し、相続に関する勉強会や相談会を開催したいですね。みなさんのお役に立つことはもちろん、自宅を買い取らせていただき、売り物件を増やすことが安定経営にもつながります」

さらに濱田さんが描くのは、不動産にとどまらず、人生のパートナーとして地域の人たちを支えていくことである。例えば不動産会社、司法書士・税理士・弁護士といったパートナー、結婚相談所などが1つのビルに集まり、ワンストップサービスを提供していきたいと語る。

「結婚相手を見つけ、その後に新居を構えて家の登記を司法書士に依頼。親の相続問題では弁護士に相談するなど、人生の節目での問題をすべて解決する。そのビルにはカフェも誘致して常に人が集い、出会える場所をつくりたいですね」

エニシアがなかったら困る。エニシアの濱田さんがいなければ困る。会社として、個人としても地域に必要とされる立ち位置をつくりたい。そして仕事を通じてずっと輝いていたいと語る濱田さんは、まさに人生のお手本にしたい女性経営者である。

 

 

――社員インタビュー・大西 真利亜さん

 

 

Q.エニシアに転職したきっかけは?

A.前職は化粧品の美容部員。不動産業界に興味を持ち、父親に宅建を取りたいと相談したとき、濱田さんを紹介してもらったんです。宅建取得の勉強方法についてアドバイスをもらうつもりが「それなら実務を経験した方がいい」と言われ、1年前に入社しました。

 

Q.不動産営業の苦労とやりがいは?

A.化粧品と家では金額が違い、お客様の人生に関わることなので責任も重大です。不動産は物件の資料集めや法律を調べるなど下準備が重要ですが、私は苦手で今も苦労しています。けれどもお客様と会話をしたり、ご案内をして喜んでいただいたときは、とても嬉しいですね。

 

Q.ずばり、濱田さんはどんな人?

A.やり手と聞いていましたが、まさにその通り。その一方、今までいろんな女性と仕事をしてきましたが、こまやかさではピカイチです。お客様先に行くとき、「この資料があるといいよ」といつも気を配ってくれます。濱田さんのもとでいろんなことを学び、力になれるくらいのスキルを身につけたいと思います。