地域に密着した身近な博物館

明石市立文化博物館

 

地域に密着した身近な博物館

 

 【明石市立文化博物館】は1991年10月、明石海峡を望む高台に開館されました。明石の歴史と文化を「自然環境と人々のくらし」と題して8つのテーマで紹介する常設展示のほか、特別展や企画展なども開催しています。また、ボランティアによる十二単・鎧の着付体験やさをり織体験、エコバック作り等のワークショップも行っています。(※現在はコロナ禍により休止中)

 明石をテーマにした展示が特徴的で、それ以外にも博物館が主催するものばかりではなく、市や様々な団体が開催する展示も多い、まさに地域に密着した博物館です。

建物は1階と2階で構成されており、各階は以下のとおりです。

 

 1階:常設展示室、特別展示室、体験学習室、ロビー、レストラン 海鮮フレンチ「まるせいゆ」

 

 2階:ギャラリー、平和資料室、大会議室

 

ポイント①(常設展示について)

 

 常設展示は、8つのテーマに沿って古い歴史から順に展示されています。

 では、各テーマの注目ポイントを少しずつご紹介します。

 

1. 明石のあけぼの

 大昔に明石の地形ができた頃や、明石に人が住み始めた頃について知ることができます。

 展示室に入ってすぐ、目に飛び込んでくる2頭の「アカシゾウ」の骨格標本は圧巻。ゾウの足跡を表現するなどの演出もされており、博物館でしか味わうことのできない“特別な空気感”を感じる事ができます。また、日本にいつから人がいたのかをめぐって議論されている「明石人」を取り上げているのも面白いですね。

 

 

2. 大昔の明石

 旧石器時代から古墳時代に至るまでの様々な資料の展示がされています。

 大昔の人々の生活の様子を、石器や土器、狩猟・採集道具や農具などを通して知ることができます。ちなみに当時の遺跡の分布状況などから、明石近辺には極少数の人々が住んでいたと考えられているそうです。今や人口30万人のまちとなりましたが、遡ると明石はとても少数からスタートしたんですね。

 

 

3. 畿内への入り口・明石

 明石が畿内への入り口として様々な役割を果たしていたことがわかるコーナーです。

 海はもちろん、陸の交通路を使って、たくさんの人が明石の地を訪れていました。そんな中、明石の名が全国的に知れ渡ったのは、『竹取物語』『源氏物語』など物語の舞台としてとりあげられたから。『源氏物語』の中で、明石は“月の名所”として全国的に名を轟かせます。その後、松尾芭蕉をはじめ多くの人々が月を見るために明石の地を訪れたそうです。現在、明石から見る月はどうでしょうか?当時の人々に想いを馳せながら空を見上げてみてください。

 

 

4. 明石の焼き物

 明石の焼き物の歴史について知ることができます。

 明石は焼き物づくりに適した粘土と燃料になる薪が豊富で、また、舟を利用して製品を各地へ運び出しやすいという土地の利もあって、古くから焼き物を盛んにつくっていたことがわかります。展示物の中で目を引くのが大きな鴟尾(しび)。鴟尾はお城の屋根に付いているしゃちほこのような焼き物です。

 また、江戸時代からは、明石焼という焼き物が作られるようになり、明石藩の名産になりました。現在も、その系統を引き継いだ陶芸家が活躍されています。

 

 

5. 明石の農業

 明石の農業に関する展示がされています。

 明石で農業が盛んになったのは新田を開発してから。播磨平野が広がる明石~稲美辺りはため池が多く、農業に関わってきた先人の努力を知ることができます。江戸時代に造られた用水路を今も使っている場所があり、先人の努力を継承していることなどがわかります。現在の明石は田畑が宅地化し、専業農家は少なくなり近郊野菜、葉物が多く作られています。

 

 

6. 明石の漁業

 明石といえばタコやタイなどがとても有名ですが、海のまち明石の漁業について詳しく知ることができるコーナーです。

 明石は昔から日本有数の好漁場と言われていますが、なぜ魚がこんなにもたくさん集まるのかが、わかりやすく展示されています。昔の漁具が、使い方もわかりやすく説明されており、漁師たちが今日に至るまで様々な工夫を施してきた努力の過程がわかります。これらの知恵がいまも受け継がれて「魚のまち・明石」をささえているんですね。

 

 

7. 明石城と城下町

 明石城や、その城下で栄えた町の様子について知ることができます。

 明石城は、西国の外様大名をにらみ、山陽道と明石海峡をおさえる「国堅めの城」という役割を果たしていたんだとか。この頃から城下町や港、街道の整備なども着々と行われ、新田開発や産業振興の努力もあって、明石はどんどんと発展していきます。

 ちなみに、城下町の町割りを担当したのは、「巌流島の決闘」や「二刀流」でお馴染みの宮本武蔵であると伝えられています。明石にゆかりがあったのはご存じでしたか?

 

 

 

8. のびゆく明石

 明治維新から高度経済成長期に至るまで、明石が発展していく過程を知ることができます。

 明石市の歴史を辿ると、「市」になったのは1919年。全国で81番目、兵庫県内では4番目の市として、誕生しました。全国的にも早いんですね。ちなみに、当時の市域は明石川より東側のみで、人口は3万2000人余り。その後、1942年に林崎村と、1951年に明石郡大久保町・魚住村、加古郡二見町と合併。この合併により、ほぼ現在の明石市の市域となり、人口は11万人を超えたそうですよ。

 また、このコーナーには当時使われていた様々な生活品などがズラリと並んでいます。現在の生活品と比較してみるのも楽しいはずです。

 

 

ポイント②(特別展示について)

 

 【明石市立文化博物館】では、年に2回、より多くの方に足を運んでもらえるよう特別展を行っています。

 2022年度の特別展は、世界的に著名な動物写真家・岩合光昭さんが世界最大級の熱帯湿地、パンタナールの多種多様な生き物たちの生態に肉薄した写真展。そして、ミリオンセラーの「なんでも魔女商会」「ルルとララ」「魔法の庭ものがたり」や「ムーンヒルズ魔法宝石店」を手がけるあんびるやすこさんの作品展が開催されました。

 また、特別展以外に、年5回の企画展を行っており、明石をテーマにした展示が開催されます。博物館にあまり興味がなかったり、今までゆかりのなかった方は、この毎年変わる特別展や企画展から博物館をもっと身近に感じることができるのではないでしょうか。自身が暮らすまち「明石」について新しい発見があるかもしれません。是非、スケジュールを確認してみてください。

 

 

 

 

ポイント③(ロビー・体験学習室について)

 

 博物館のロビーは、江戸時代から昭和30年代まで明石で使われていた漁船「ケンサキミヨシ」や、明石市二見町西二見の御厨(みくりや)神社のお祭りで使用されていた「布団太鼓」などが展示されています。

 館内の奥にある体験学習室には鎧や十二単が飾られており、予約制で着付け体験等もしています。(※現在休止中)

 展示コーナーでは、時節に応じたテーマで親しみやすく学べる展示を行っています。来館した際は、是非足を運んでみてください。

 

 

 

学校では学べないこと

 

 今回、取材を担当いただいた、元教員である学芸員の須貝さんは、博物館の魅力についてこのように話しています。

 

 「やはり博物館の資料はインパクトが違います。例えば博物館という特別な空間で、実物大のアカシゾウの骨格標本を目にした子どもたちは、その迫力に圧倒されることでしょう。本物の資料を目の前で見ることができるという点が、学校では学べない博物館の一番の魅力ではないでしょうか。」

 

 

 須貝さんは続けて、博物館は“知的な刺激を受ける場”としての役割を果たす大事な施設で、そこにある資料などから受ける刺激は計り知れないものがあるということも教えてくれました。普段感じる事のできない“特別感”を味わうことが出来る点が、博物館の一番の魅力である事は間違いないですね。

 

地域のみんなで学ぶ施設へ

 

 須貝さんは、博物館には展示だけでなく、色々な目的を持って足を運んでほしいと話します。

 

 「【明石市立文化博物館】は子どもや学生さんはもちろん、老若男女年齢を問わず、明石の歴史や文化に興味を持つことができる場所で、今まで知らなかった明石の新しい発見がある場所です。毎年、明石に関連する様々なジャンルのものを企画しているので、いろんな方々にお越し頂き、明石をもっと知ってもらうきっかけとして使ってもらえると嬉しいですね。」

 

 

 今回ご紹介したのは、【明石市立文化博物館】。 小さいお子様の初めての学習や、高齢の方の生涯学習の手助けとなる“地域に密着した博物館”へ。

 【明石市立文化博物館】は、日々、地域の方に寄り添いながら新しい発見を提供しています。気軽に利用できる市民の身近な施設として、今後も目が離せません。是非足を運んでみてください。

住所 〒673-0846 明石市上ノ丸2丁目13番1号
営業時間 午前9時30分~午後6時30分(入館は午後6時まで)
定休日 月曜日(国民の祝日に関する法律に規定する休日及び特別展開催期間中を除く)、年末年始(12月29日~1月3日)
料金 大人200円 大学・高校生150円 中学生以下無料 ※特別展などは別途特別料金
駐車場 有 ※最大32台
電話番号 078-918-5400
HP http://www.akashibunpaku.com