明石の手作りパン屋さん代表

ダンマルシェ

※写真は大久保北店

 

地元に根付いたパン屋さん

 

【ダンマルシェ】は地元の方に長年愛されてきた手作りにこだわったパン屋さんです。1985年創業以来、明石・神戸を中心にたくさんのファンを作ってきた【ダンマルシェ】。とくに市場文化がある明石で生まれた【ダンマルシェ】は“3たて”(焼きたて・揚げたて・つくりたて)をモットーに多くの食卓に笑顔を運んできました。今回は明石のパン屋といえば【ダンマルシェ】。創業のキッカケやこれまでの歩みについてご紹介します。【ダンマルシェ】を運営する株式会社 中市大福堂 代表取締役 中市浩嗣さんにお話をお伺いしました。

 

創業への第一歩目

 

まだスーパーマーケットもあまり出回っていない頃。市場が多く存在した明石で当時和菓子店として創業した中市大福堂。後に4代目となる中市さんは中学生の頃からお店の手伝いはしながらも、旅行の添乗員になるという夢に向かって日々勉学に励んでいました。しかし転機が訪れたのは中学卒業を控えた3者面談の時。夢に向かってしっかり勉強したかった中市さんは希望校の話をしようとしたが、3代目である父親から“家業を継がせる”という言葉をその場で初めて聞くことになりました。

「びっくりしましたよ。もうレールは敷かれているんやという事をそこで初めて実感しましたね。」

高校卒業後、当時和菓子よりもケーキやパンが流行ってきていたこともあり神戸の洋菓子店で修行。そしてパン屋をするという店の方針でパン屋になることに。これが後の【ダンマルシェ】となりました。

 

苦難を乗り越え

 

大久保町にできたショッピングモールでパン屋をスタートさせ、オープン当時はとてもお客様が少なく売り上げもまったく伸びなかったそうです。このままではなにも好転しないことを危惧した中市さんは、知り合いの会社の職人さんのところへ1か月間修行。辞典を開いたり、本を読んだりしながら独学でパンの知識を蓄え、当時三ノ宮にあったパン屋の商品を買っては真似てみるなど試行錯誤をたくさん繰り返したといいます。こうして中市さんが考えるパンは年月をかけて少しずつ磨かれていきました。

努力の甲斐って徐々に売り上げも上がりましたが、従業員が増えてきた頃は悩む事も増えていったといいます。「お店を任されていた私は当時まだ21歳で一番年下。もちろん職人さんやパートさんたちは皆年上でした。いろんな葛藤を抱えながらも、日々どうすればおいしいパンが作れるか、どうすればたくさんの方に提供できるかを考えていました。」

若き経営者の苦悩は日々尽きませんでしたが、この頃は景気も上向き始め一歩ずつ【ダンマルシェ】へと近づいていくことになりました。

【ダンマルシェ】の誕生

 

記念すべき第一号店は西明石。ヨーロッパ帰りの設計士の協力もあり喫茶店が併設されたパン屋としてスタートした【ダンマルシェ】。このスタイルが大ヒットとなり、【ダンマルシェ】の名前は多くの人に知れ渡る事になります。当時の心境について中市さんは

「努力は報われるんだな、と。そして商売って本当におもしろいなと思いました。バブル時代が終わりかけの頃に【ダンマルシェ】はオープンしましたが、その影響はほとんどありませんでした。ヨーロッパ産の素材や機械を使用し、どんどんブランド力も上がってきました。当時は(値段の)高い商品でも付加価値が高ければしっかり売れたのです。」

その後は勢いそのままに着々と東へ店舗展開していった中市さんでしたが、ここで大きな落とし穴が待っていました。

 

お店の在り方

 

「新長田の百貨店で行った催事がとてもうまくいったこともあって、大阪の梅田にある百貨店で出店しました。当時はまだ私自身若かったこともあり“怖い物知らず”だったので、とうとう大阪に進出だと気持ちばかり大きくなっていました。まさに“天狗”になっていたんですね。」

右肩上がりで大阪へと進出した【ダンマルシェ】でしたが、そこでは地元のようにうまくいきませんでした。5年ほど懸命に努力した末、撤退。この時に感じた事を次のように話してくれました。

「身の丈を知ることが大事だと気付きました。そして(店舗展開の)エリアも限定しようと。地元の方に喜んでいただこうという原点を気付かせてくれたのがこの時です。しっかり地に足をつけて地元明石や神戸でもっと頑張っていかなければいけないなと思いました。」

中市さんは“地域の方々に愛されるパン屋さん”でありたいと、【ダンマルシェ】の今後の方針が固まった良いキッカケだったと当時を振り返ってくれました。

 

パン屋としてのこだわり

 

現在明石を中心に兵庫県下に9店舗を展開している【ダンマルシェ】。パンへのこだわりはかなり強い。

独自性をしっかりと出せるように他社と同じ物は極力使わず、自社でできないものに関してはレシピを出して一から作るようにしています。そしてなんといってもパンは生地が命。生地にしっかりとこだわり、それを安定して作り続けることができるよう日々研究を重ね続けています。生地を作る上で特にこだわっているのは「水」。質はもちろん、季節によってあらゆる温度を細かく調整しながら作り上げます。室温、粉の温度、水温を都度見極め、最適な状態でパンが焼き上がるように工夫する徹底ぶり。店舗では予定数を一度に作らず、数回分に分けて焼くことで、なるべく“出来たてのもの”を提供しています。

毎日100種類以上のパンを職人が愛情を込めて作っており、お店にはとたくさんのパンが並びます。天然温泉水「月のしずく」を100%使用した生地にフレッシュバターを練り込み、淡路島の藻塩をトッピングして焼き上げた「塩バターパン」。神戸ワインに漬け込んだ牛肉と淡路産玉ねぎを煮込んだ自家製カレーを包み、サクッと揚げたダンマルシェ一押しの「牛肉カレーパン」。他にも焦がしバターを使用し、風味豊かに仕上げたサブレ生地をのせた「焦がしバターのメロンパン」は、普通のメロンパンとはひと味違うおいしさが楽しめる人気商品です。共通して言えることは、やはり全てのパンの「生地」がとても美味しい。一度食べたらまた通いたくなること間違いなしのお店です。

 

“dans marché”

 

中市さんはお店を運営しながら一番嬉しかったことについて次のような話をしてくれました。

「昔、お客様で卵アレルギーをお持ちのお子様がいらっしゃって、ケーキのある誕生日会をしたことがないという話を伺いました。なんとかしてあげたい一心で卵抜きのパンを作り、デコレーションはケーキ職人に任せ、初めて“バースデーブレッド”を作りました。後日、そのお客様から感謝のお手紙を頂いたことがあります。その時は全員で涙して喜びましたね。やっぱりお客様に喜んでいただく事が一番大切だということを改めて実感させてもらった良い経験でした。」

食卓に笑顔を届けたいと願う【ダンマルシェ】の想いが一つの形となった瞬間でした。

また、中市さんは最後に「私の夢を語らせてください」と今後の夢について語ってくれました。

「地元のどこかのどかな場所で平屋の工場を作り、パン売り場やカフェも併設されているような、その場所ひとつで【ダンマルシェ】が完結するような施設を作りたいんです。工場見学もでき、自家栽培できる野菜農場なんかも作りたい。パンを買いに来るだけではなくお越しになるお客様が楽しんでもらえるような空間を提供するのが私の夢なんです。」

壮大な夢をまるで少年のように目を輝かせ楽しそうに話してくれた中市さん。この夢の実現はそう遠くないような気がしました。

“dans marché”とはフランス語で「市場へ」という意味。今後も地元の玄関口のパン屋として、そしてお出かけの行き帰りにたくさんの方が【ダンマルシェ】のパンを求めお店にやってくるでしょう。

住所 本社:兵庫県明石市硯町3丁目4-23
電話番号 078-923-3231
営業時間 7:00~13:30  ※日曜営業
定休日 無休
駐車場
クレジットカード 不可
座席
貸切可否
予算目安 ~¥1,000
お子様対応
その他店舗情報 ホームページをご覧ください ※https://dansmarche.co.jp/