今、明石の誇る観光名所として注目を集めているのが、大蔵海岸にあるバーベキュー場『ZAZAZA』
Let’s enjoy life and... BBQ! 仕掛け人 成田 收彌今、明石の誇る観光名所として注目を集めているのが、大蔵海岸にあるバーベキュー場『ZAZAZA』
Let’s enjoy life and... BBQ! 仕掛け人 成田 收彌今、明石の誇る観光名所として注目を集めているのが、大蔵海岸にあるバーベキュー場『ZAZAZA』だ。
その仕掛け人、成田收彌氏は「バーベキューはコミュニケーションツールです」と胸を張る。
成田氏が率いる株式会社バーベキューアンドコーは、人々が集う“空間づくり”を通し、地方の街をもっと豊かに魅力的に育てるための事業を展開中だ。
バーベキュー事業を成功へと導いた成田氏のプロデュース力とその原点に迫る。
成田收彌 (なりた・あつや)
株式会社バーベキューアンドコー代表取締役/株式会社キャッスルホテル専務取締役
1982年兵庫県明石市生まれ。関西学院大学卒業後、大手外食チェーンへ就職。その後大手ホテル勤務を経て地元に戻り、株式会社キャッスルホテル専務取締役に就任。2017年に株式会社バーベキューアンドコーを設立し、関西を中心にバーベキュー関連のビジネスを展開している。
2019年4月、兵庫県明石市に新たな観光スポットが誕生した。
その名はバーベキューサイト「ZAZAZA(ザザザ)」だ。
大蔵海岸にあるZAZAZAの魅力は、なんといってもそのロケーションだ。目の前には美しい瀬戸内海が広がり、淡路島や世界一の吊り橋・明石海峡大橋が一望できる。まさに抜群の立地のなか、オールシーズンでバーベキューを楽しめる。
仕掛け人は、ZAZAZAを運営する株式会社バーベキューコーの成田收彌氏だ。
成田氏とバーベキュー事業との出会いは2008年。きっかけはとある相談から始まった。
大学を卒業して大手外食チェーンに就職したあと、地元・明石に戻り、父親が経営する株式会社キャッスルホテル専務取締役に就任した。その頃、会社に1本の連絡があった。
「うまくいっていないバーベキュー場がある」という相談だった。
話をうかがって社内に持ち帰ったが、ほとんどの人間は消極的に捉えていた。
しかし検討を重ねた結果、株式会社キャッスルホテルの事業セクションのひとつとして、2009年から大蔵海岸バーベキュー場の管理を請け負うことになった。そしてその10年後のバーベキュー場「ZAZAZA(ザザザ)」オープンに向けて、本格的に取り掛かかることになるのだが、なぜ、このプロジェクトを引き受けることになったのか。
「私どもの運営するホテルは明石市にあるのですが、地元の行政の方からお悩みの相談をいただいてどうにかしたいと思ったのです。そんなふうに“困りごと”に対して解決策を提示する事業というのは、祖父の代から受け継いだ弊社の姿勢と言えるかもしれません」
もちろん、すべての“困りごと”を解決することはできない。しかし「一般的に難しいだろうと言われることに、“やってやろう”と血が騒ぐ感覚はあるかもしれない」と成田氏は語る。
「うちの会社の歴史を見ていくと、地域の“困りごと”を解決することが、いつもビジネスの原点にあるんです」
成田氏の会社の始まりは、祖父の代までさかのぼる。
名古屋で「丁稚奉公」をしていた祖父が、明石の地で最初に始めた事業は、馬で荷物を運ぶ「馬引き」だった。その後、祖父は“人助け”を通して、あらゆる事業を成功へと導いていく。まず、商売人の仲間からマッチ工場の見学に誘われ、帰宅後そのまま自ら図面にし、マッチ工場経営を始めた。オイルライターの登場によって下火になったマッチ業界を助ける形で、「広告マッチ」を提案してヒットさせていった。
それから、祖父は下水処理技術の開発に乗り出して成功させると、その会社を大企業(カネボウ)に売却。今でいうところのM&Aによって手に入れたお金を元手に始めたのが、不動産業だった。
「当時、明石には大きな建物やビルがなかったため、まずはビルを建設しました。ただ、本人からすると不動産は安定した収入は得られるものの、仕事としての面白さを感じなかったのでしょう。また何かやりたくなって、建物の中に何か入れようということになった」
そこで、祖父が目をつけたのは、当時日本に入ってきたばかりのマクドナルドのフランチャイズ事業だった。
「大阪心斎橋、名古屋の小牧、沖縄の嘉手納、その次が明石でした。先の3つがもう廃業してしまったので、今、私の叔父が日本で一番古いマクドナルドのフランチャイジーとして引き継いでいます」
その後、祖父のマインドを受け継ぐ成田氏の父も、次々と事業を立ち上げてはヒットさせる。
「“明石にビジネスマンが泊まれる場所がない”という困りごとを聞いたら、初めて明石にビジネスホテルを作って。“宴会場みたいなコンベンション機能が明石にはない”という声を聞いたら、宿泊はビジネスタイプなのにレストランと宴会場を併設した、なかなかトリッキーなホテルを建てるんです。そうやって明石にコンベンションができる場所が生まれました」
このように先代たちの実業家の成功例は枚挙にいとまがない。「困りごとを解決するというのは、会社にとっての発展の機会だと思っています」と、成田氏は話す。
「最初に始めた事業は今とは違います。代が変わるごとにどんどん変化してきています。今回もバーベキューの話だから、というより、祖父の代からどういうスタンスでビジネスをしてきたかというところで引き受けることを決めました。この明石という土地で商売させていただいている以上はその土地の困りごとに対して、何も検討せず損か得かのジャッジだけでやるかやらないかを決めない、というスタンスがあるということです」
その先代から続く「困りごとを解決する」というビジネススタンスから始まったバーベキュー事業は、成田氏にとって大きなビジネスチャンスとなった。2019年4月7日のリニューアルオープン以降、大ヒットとなっている。
成田氏にとって大きな転機となったこのバーベキュー事業は、実は自身の思い出と深いつながりがある。
幼い頃、成田氏の父は仕事で多忙を極めた。ほとんど一緒に遊んだ記憶がない。キャッチボールをしたこともなければ、釣りにもほとんど行ったことがない。
唯一、父と一緒に遊んだのが“焚き火”だった。
バーベキューの火を見るたび、幼い頃に父と一緒に過ごした光景を思い出す。
「私自身、バーベキューは自分の根幹とつながっている感じがするんです。なぜだろうって考えたんです。父は忙しかったものですから、そんなにべたべたと遊んだ記憶があまりなくて。でも、“焚き火”をした思い出はあるんです。どんな木がバリバリと燃えるのかとか、どのようにくべていくのがいいかとか。そういうことが記憶とつながっていて。それこそバーベキューで炭の世話をするとか、焚き火のときに薪の世話をするとか。全般的にまったく苦がなくできてしまう。バーベキューが自分の根幹につながっている。それだけで惜しみなくバーベキュー事業にコミットできているのかなと思います」
焚き火には不思議な魅力がある。
人間の五感に迫り来るものがある。熱さや視覚的な効果、匂いも脳にダイレクトに伝わってくる。
「おそらく人類の歴史から考えても、狩猟採取生活をしていた頃、火を囲むという行為は食料を焼いている時間や、天敵から身を守れる時間など、安心していいシーンとして遺伝子に組み込まれているのかもしれません」
ある日、成田氏はZAZAZAに訪れたお客さんと話をする機会があった。
その方は、遠方から明石へ日帰りで来られる友人と会うことになっていた。「どうすれば明石まで足を運んでくれた友人に喜んでもらえるか」。考えた末、選んだ場所がこの大蔵海岸のバーベキュー場だったようだ。
「バーベキューをやろうよ」と誘った。たった数時間の滞在だったが、友人は笑顔でバーベキューを楽しんで満足して帰ってくれたという。
「ああ、これが私たちがやりたいことなんだって思いました。私たちが作ったものは何だったのか、ということを改めて考えたとき、ご飯を食べる場所を作りたかったのか、それともバーベキュー場を作りたかったのか、ということでいうと、地域の誇りみたいなものを作ったんじゃないかって一つ言えると思うんですよ」
これからもバーベキューを通しヒントを得た“人が集まる空気づくり”に尽力したい――。そう思えた瞬間だった。
そこで成田氏は、会社の理念として3つのポリシーを掲げた。
・ミッション:人が集う、空気を創る
・ビジョン:愉しんで、楽しませる
・バリュー:みんなのためになる
成田氏が社長を務める株式会社バーベキューアンドコーのホームページを開くと、「BBQからひろがるコミュニケーションで、人を笑顔に、地域を明るく。」という言葉が飛び込んでくる。
「先ほどの話ではないですが、バーベキューって、料理名でも食事シーンの名前でもなく、コミュニケーションなんです。遠方から明石に人を招くというコミュニケーションがあったとき、せっかく明石に来て、限られた時間、その場所にせっかくだから呼ぼうよ、明石の一番いいところを体験して帰ってもらおうよって思ってくれる。そういう“人が集う空気”そのものを作っていくことのが、私たちのミッションだと思っています」
株式会社バーベキューアンドコーでは、バーベキュー場のほか、カフェなども手がける。どれも人気なスポットとして注目を集めている。“空間づくり”において成田氏が一番大事にしていることは、スペース(空間)をプレイス(場所)にする感覚だ。
「自然は美しいっていわれますよね。でも、自然なんてほんとは美しくないと思っています。ジャングルに行って美しいって、決して思わないです。美しさっていうのは、自然と作為の融合なんです。例えば、庭と呼ばれる場所は、自然なんだけど、意図的に作られています。例えば、京都にある石庭なんかは緑すらなくて石しか置いていません。人の作為なんです。人の作為と自然の融合を、人は美しいというふうに感じるわけです。そのことは、“空間づくり”も同じだと思っています」
ZAZAZAのバーベキュー場には、砂浜があって、海があって、明石海峡大橋があって、淡路島がある。しかし、どれも成田氏自身が作り出したものではない。
「明石海峡大橋だって私が建てたわけではないですし、いわば借景ですよね。あくまでも自然単体で美しいのではなくて、自然に対して作為的にどうアプローチするか。そういう“ものづくり”のイメージで、これからも新たな視点を見つけ出していきたいですね」
今後、成田氏は公園づくりや街づくりにも乗り出す予定だ。成田氏によってデザインされていく明石市はどんな輝きを見せるのか、今から楽しみだ。
名称 | 株式会社バーベキューアンドコー |
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ホームページ | https://bbqandco.jp/ |